◆人間関係をなんとかやろう、結構楽しいよって伝えたい
――いい話!
新井:2人の関係性に第三者が入りこんでくることで、また別の化学反応が起きる。当事者同士はギャーッと必死になってるけど、他の人が介入することによって、違う動きや流れができるでしょ。
『SPUNK‐スパンク!‐』では、気が付いたら人間関係ばっかり描いてる。コミュニケーションとか人間関係を構築するって、今のこの世の中ですごく大きいことだっていうのは最近描いてて見えてきた。人間関係なんとかやろうって。結構楽しいよって伝えたい。
――20年引きこもっていた新井さんがそう言うと説得力があります(笑)。
新井:ペニバンの話だって、俺一人で考えてたら「マジかー」なんてセリフ出てこない(笑)。
――これから初めて『SPUNK‐スパンク!‐』を、あるいは新井英樹作品を読む女性読者に、なんて言って勧めますか?
新井:なんだろう。でも俺の漫画を読んだことない人にとっては、入口として一番読みやすいかもしれない。
清水:今回は、SMが題材になっているものの、好きという気持ちを体現したり避難場所になってるのがたまたまSMなだけで、それがアイドルだったりゲームだったりする人もいるだろうし、好きなものの内容は違えど、共通するものがある。好きなものを好きって言って楽しむという方に読んでいただきたいです。
新井:初・新井英樹は、ぜひ『SPUNK‐スパンク!‐』で(笑)。
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新作『SPUNK‐スパンク!‐』で描かれているのは、「切実と滑稽(こっけい)」の世界。しかし、「切実と滑稽」という表現はSMだけに限らず、懸命に生きる人全てに当てはまります。登場人物たちのセリフや表情に胸を打たれるのは、「面白いなあ、人間って!」という作者の人間への純粋な感動が、一コマ一コマから滲(にじ)み出ているからかもしれません。
SMの「スパンキング」を連想させるタイトルですが、SPUNKには「勇気、気力、快活さ、活気」という意味があるのだとか。過去の新井英樹作品に慣れ親しんできた方も、初めて読むという方も、作者のエールを感じ取って欲しいと思います。
©新井英樹 参謀:鏡 ゆみこ『SPUNK‐スパンク!‐』ビームコミックス KADOKAWA
<文/藍川じゅん>
【藍川じゅん】
80年生。フリーライター。ハンドルネームは永田王。著作に『女の性欲解消日記』(eロマンス新書)など。