「W杯カタール大会では、ABEMAが全試合無料で配信しましたが、今回のFIFA+での配信は大会側の“公式配信”ですからね。たしかに解説は簡易的なものですし、派手な演出もないものの、純粋に試合を楽しみたいだけであれば、むしろこっちのほうがありがたいと言える。

東京五輪も北京五輪も公式で全試合が無料配信されていましたが、今後の国際大会においても“公式による無料配信”がスタンダードになっていく流れができているのは確か。試合だけを楽しみたいということで、地上波よりもネットでの配信を選ぶスポーツファンも増えていくでしょう」(同)

 放映権が高騰することに加えて、公式の無料配信があれば、いよいよ民放各局は国際大会の中継から距離を置いていくことになりそうだ。

「これまで民放各局は、大きな国際大会のスポーツ中継において、タレントなどを起用しても“テレビ的な演出”で盛り上げてきました。しかし、ジャニーズが排除されたことでまったく注目されなくなったフジテレビのバレーボール中継にまつわる状況を見ていると、テレビ的な演出がスポーツファンのためのものではなかったと言える。スポーツファンに向けられていないスポーツ中継なんて、必要ない。いよいよ地上波からスポーツ中継が消える時期なのかもしれません」(同)

 視聴者の嗜好が多様化し、スポーツ中継で視聴率が見込めなくなっている状況のなか、有料配信サービスで中継されるプロスポーツも増えている。さらに、国際大会における放映権料の高騰、公式による無料配信、そして“テレビ的な演出”の問題という、さまざまな理由が絡み合い、地上波での国際大会の中継は本格的な見直しをせざるを得なくなった。果たしてこのまま地上波からスポーツ中継が消えるか、それともスポーツの魅力を上手く伝えるための新たな方法を手にすることができるのか──。地上波テレビは今、岐路に立たされている。