一方で、生徒と向き合うことで九条自身も変わりつつある。自分の死の運命を回避するという目的のために、一歩距離を置いていた教室内の事情に足を踏み込んだことで、以前の人生にはない人間味を得ているように筆者は感じる。我が子を搾取する瓜生の母に絶望し、瓜生の親友として幾ばくかの金と土下座で通学の許しを請う向坂の熱意を見て、九条が遠目で涙をぬぐっているように見えたのは気のせいか。夫・蓮(松下洸平)が切り出した離婚に対し、九条自身も「離婚したくない」と本音を明かすことができたのも、鵜久森や瓜生の姿に感化されたからだろう。

 鵜久森、瓜生、向坂を振り向かせることに成功した九条だが、第3話では反九条派が攻勢に出るようだ。第2話のエンディングで黒板に九条への殺害予告が書きなぐられ、早くも一度目の人生にはなかったイベントが発生。これまでは、一度目の人生で得た知識により九条はうまく先手を取って立ち回ることができたが、ここからは臨機応変な対応が求められる。加えて、殺害予告ができたということは、D組の教室の監視カメラが機能しなくなった可能性がある。九条の優位性が揺らぐ展開となりそうだ。もっとも、「九条里奈を殺害する」という言葉を文字通りに実行するのは現実的ではなく、この予告を書いた犯人の目的はあくまで九条の失脚にあるのではと推測する。九条派の3人、離婚を思いとどまった蓮など“守るべき者”が増えた九条のどこを攻めてくるのか。予告犯の狡猾さが披露される回になりそうだ。

 また、D組の“真の実態”が解明されることにも期待している。反九条派のグループチャットに参加していたのは鵜久森を除いた29名。“鵜久森いじめ”の主要メンバーは鵜久森以外のクラス全員参加を喜々として情報共有していたが、所詮はチャット上でのつながり。クラスの半分は冷めた態度で“我関せず”を決め込んでおり、リーダー格の仲間とは言い切れず、九条派につくことが得とわかれば平気で乗り換える可能性がある。水面下で繰り広げられるそうな勢力争いからも目が離せない。

■番組情報
土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された
日本テレビ系毎週土曜22時~
出演:松岡茉優、芦田愛菜、奥平大兼、加藤清史郎、當真あみ、茅島みずき、山時聡真、本田仁美(AKB48)、窪塚愛流、福崎那由他、田牧そら、山下幸輝、寺本莉緒、萩原護、詩羽、田中美久(HKT48)、浅野竣哉、丈太郎、柿原りんか、橘優輝、莉子、田鍋梨々花、夏生大湖、藤嶋花音、岩瀬洋志、阪本颯希、岡井みおん、藤﨑ゆみあ、のせりん、細田善彦、長井短、サーヤ(ラランド)、犬飼貴丈、荒川良々、松下洸平
脚本:ツバキマサタカ
音楽:松本晃彦
主題歌:菅田将暉「ユアーズ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
演出:鈴木勇馬、二宮崇
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:福井雄太、鈴木努、秋元孝之
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
公式サイト:ntv.co.jp/saikyo