◆持ち味が織り込まれたリアル
本作のひとつ前のクール、TBS金曜ドラマ『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』(以下、『ペンディングトレイン』)で演じた熱血消防士・白浜優斗は、28歳だった。
赤楚の等身大の気持ちがこれでもかと込められた同役は、まさに赤楚の生き様そのものだった。
なんてことはない日常の些事のような恋愛模様が点描される本作では、コミカルな演技がやや大げさに繰り出される瞬間もある。『ペンディングトレイン』での熱演を見たあとではグッと印象が違って見える。
『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系、2020年)では、30歳という節目の年を嬉々として演じた。いずれの作品でも赤楚は、年齢の微妙な調整によってどんな役柄にもぴったり合わせてくる。
赤楚の持ち味がかなり細かく織り込まれた向井役は、赤楚の現在地点を知る役柄だといえるだろう。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu