これは、投手は走者なしなら15秒以内、走者がいる場面は20秒以内に投げないと1ボールが宣告されるもの。打者も残り8秒までにバッターボックスに入って構えることが必要で、間に合わなければ1ストライクが宣告されます。大谷は4月5日の試合で、投手としてボールを、打者としてストライクを宣告され、史上初の“投打でピッチクロックに違反した選手”になりました」(フリーのスポーツライター)

 7月10日に行われた日本のプロ野球のオーナー会議でも、ピッチクロックが話題となり、導入の可否が検討されることが決定。若者が“タイパ(タイムパフォーマンス)”を重視する状況を鑑みれば、野球離れを防ぐためにピッチクロックは必須かと思われるが、導入には越えねばならぬハードルがいろいろと存在する。

「アメリカと日本では根本的に野球に対する考え方が違います。メジャーはデータにはこだわりますが、プレー自体はよく言えばダイナミック、悪く言えば大雑把で、日本のプロ野球に慣れた目には雑に見えるプレーが多い。ランナーが出てもクイックモーションをしない投手もおり、イチローや大谷翔平はメジャーに行ってから盗塁数が飛躍的に増えました。

 日本の野球はバントで揺さぶったり、臭いボールをファールでカットしたり、細かい技術に長けており、そういった細かいプレーへのこだわりが、WBC優勝につながったと言っても過言ではありません。しかしピッチクロックが導入されれば、試合のテンポが早まるのと引き換えに、野球が大味になるのは確実。とりあえず盗塁は激増するでしょう。それゆえネットを見ると、早急にピッチクロック導入を求める声があがる一方、強硬に導入反対を主張するコメントも多く、意見は完全に二分しています」(同上)