具体例を見るともう少し番組の趣旨がわかるかもしれない。集まったメンバーが最初に“注文”したのは「自分だけ知ってるセット」。自分だけ知っていることを周りに説明して驚かれたり感心されたりするときの気持ちよさを、追体験できるセットである。誰かが好きなテーマについて話しているとき、周りはそのテーマについて何も知らない状態で話を聞かなければならない。たとえばバカリズムのターンになったとき、彼は次のように切り出した。
「みなさん、傘って知ってます?」
周囲は「傘?」「初めて聞いた言葉」などと反応する。そこから傘の形状についてバカリズムが説明をはじめ、彼が「これすごいのが、折りたたみ式なんですよ」と言うとメンバーが驚きの表情を浮かべる。「骨っていうのがあるんですね」とバカリズムが折りたたみの仕組みについて解説をはじめると、「人の(骨)ですか?」と質問が出てきたりする。さらにバカリズムは、正月になると傘の上に枡を乗せて回す人も現れる、と話しはじめる。あり得ないといった表情で聞く面々。“注文”を終えたバカリズムが感想を述べる。
「知らないって言われたときすごい気持ちいいんですけど、だんだん、なんてこの人たちわからず屋なんだってイライラしてくる」
この喫茶店で提供されているメニューはほかに、かかってきた電話を好きなタイミングでガチャ切りできる「ガチャ切りテレフォンセット」、改めてお祝いしてほしい内容を自分で申告し周りに祝福してもらう「セルフサプライズケーキセット」、わざわざ他人に話すほどでもないことを話してみたい欲を満たすことができる「話すことでもない話セット」など。
このいずれもあまりほかに見たことがないゲームだ。いや、ゲームなのだろうか。トークのようでもあり、コントのようでもある。そんなジャンル不定の何か、どこで面白につながるのか見えにくい何かに出演者が協力しながら取り組み、手探りで“正解”を探り当てていく。さっきのバカリズムのコメントのように、やってみてはじめて「気持ちいいけどイライラする」みたいな感覚を発見し共有する。そんな手探りの様子が面白い。