日本独自の魅力もふんだん
オリジナルの台湾版と大きく異なることのひとつは、京都を舞台にしており、その情景も大いに楽しめること。とある有名な場所にも、実際に行ってみたくなるだろう。岡田将生をはじめとした実力派俳優それぞれの、京都弁のハマりっぷりにも聴き入ってみてほしい。
もうひとつオリジナルの台湾版と違うのは、「男女の役割を交代させた」こと。そちらでは女性が「ワンテンポ早い」、男性が「ワンテンポ遅い」だったのが、それが今回の日本リメイクではまるっきり正反対になっているのだ。確かに男女の立場を固定しなくても成り立つ物語であるし、おかげで「若干ウザいけど根は純粋で予想外の事態に慌てる様までも含めてキュートな岡田将生」「陰キャだけど(だから)実は積極的でかわいい清原果耶」が見られるのが嬉しかった。
さらには、2024年正月に『カラオケ行こ!』の公開が控える山下敦弘監督と、連続テレビ小説『あまちゃん』などでおなじみの宮藤官九郎の脚本も相性が良かったと思う。前者に良い意味とゆるくてとぼけた笑いのセンスがあることは前田敦子主演の『もらとりあむタマ子』などで証明済みであるし、それが後者らしいクセの強いサブキャラクターとの掛け合いと違和感なく融合していた。
また、本作は“日焼け”が謎解きのヒントになっていたり、花火大会が行われるなど、夏の季節が重要な内容だ(台湾版は旧暦7月7日の“七夕バレンタイン”が重要なイベントとなっていた)。前述した通り本編では「タイミングが合わない」ことを憂いている人にやさしいメッセージを掲げている一方、この映画が“願いを届ける”七夕の7月7日より公開されていること、夏が本格的に始まる今に観るのは「絶好のタイミング」だ。ぜひ、劇場で楽しんでほしい。
『1秒先の彼』
7月7日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
キャスト:岡田将生 清原果耶 荒川良々 福室莉音 片山友希 加藤雅也 羽野晶紀 しみけん 笑福亭笑瓶 松本妃代 伊勢志摩 柊木陽太 加藤柚凪 朝井大智 山内圭哉
監督:山下敦弘 脚本:宮藤官九郎
原作:『1秒先の彼女』(チェン・ユーシュン)
製作:『1秒先の彼』製作委員会
制作プロダクション:マッチポイント
製作幹事・配給:ビターズ・エンド
2023年/日本/カラー/DCP/5.1ch/ヨーロピアンビスタ/119分
C) 2023『1秒先の彼』製作委員会