◆「セリフでは語られない心情」を感じさせる表現力

それは、“めんどくさい男”がもつ“不器用さ”を永山が丁寧に表現しているからではないでしょうか。みちに語りかける口調や、ちょっとした“間”。そこにセリフでは語られていない、彼女への愛情や後ろめたさ、戸惑いを感じるのです。

特に印象的だったのは第7話、陽一の浮気を知って家出をしたみちが、一晩明けて帰宅した朝のシーン。みちが家に入り、荷物をまとめて再び家を出ようとするまでの約2分30秒。何か言いたげに、どこか申し訳なさそうに、でも言い訳がましい様を、永山はひと言も発さず、まばたきや仕草だけで表現しています。

セリフなしでも、心情を十二分に視聴者に伝える永山。その繊細な表現力があるからこそ、彼が演じるキャラクターは視聴者に愛されるのです。