前半はハジメ視点だ。恋い焦がれた路上ミュージャンの桜子(福室莉音)と交際に至り、花火大会の日曜日を迎えるも、気がつくと日曜日をすっ飛ばして月曜の朝になっていた。日曜をすごした記憶もない。しかも体は日焼けしており、通りかかった写真屋には自分の写真が飾られている。一体どういうことなのか? 後半、その日曜日に何があったのか、ハジメを密かに好いているレイカ視点で解き明かされる(そのSFギミックを説明してしまうと台無しなので、説明は省く)。
こう聞くと、本作の脚本を担当したクドカン(宮藤官九郎)の代表作『木更津キャッツアイ』(TBS系)を思い起こす御仁もおられよう。ある一連の出来事をドラマ1話の前半と後半で「異なる視点」から描き、後半の「謎解き」をもって視聴者がカタルシスを得る。例の仕掛けだ。
ただ、本作はリメイク作品だ。オリジナルは2020年の台湾映画『1秒先の彼女』。物語の基本プロットは同じとしつつ、舞台を台北から京都に移したほか、さまざまな点で設定が変更され、クドカンなりのアレンジが効いている。
そんな変更点の中でもっとも大きいのが、W主人公の性別をオリジナルの逆にしたことだ(それゆえ、タイトルの「彼女」が「彼」に変わっている)。オリジナルでは、ワンテンポ早い郵便局員シャオチーを女性(リー・ペイユー)が、ワンテンポ遅いカメラ好きバス運転手グアタイを男性(リウ・グァンティン)が演じている。
W主人公の性別変更に伴い、観客が受け取る物語の印象は様々な点で変わった。その中で特に指摘しておきたいのが、両作の女性側主人公がまとう「萌え」の違いである。
【こちらの記事も読まれています】