だが、ジャニーズ事務所による被害実態の解明などの対応が不十分であるという世間からの批判が強まっていく中で、企業側にも確実に動揺が広がっていった。その結果、先述した例などのように、CM契約期間終了などのタイミングで事を荒立てずに「ジャニーズタレントを外す」という対応を取る企業が現れてきているのだろう。無論、Snow Man・目黒蓮など勢いのある若手はこのような状況下でも大手企業の新CMに起用されているが、今後は文春で報じられた木村の事例のように「事務所がケジメをつけるまで新規契約は難しい」という認識が広告業界で拡大していく可能性がある。
実際、ジャニーズとの付き合いが特に大きいテレビ局でも変化は起こりつつある。6月29日に行われたテレビ東京の定例社長会見では石川一郎社長は「きちんとした調査をして、それを外部に公表してほしいとお願いしております」としてジャニーズ事務所に対して6月初めに調査の申し入れをしたことを明かした。NHK、日本テレビ、フジテレビ、テレビ朝日は5月の定例記者会見で一様に「事務所の対応を慎重に見守りたい、注視したい」とするコメントを発表していたが、テレビ東京がわずかだが踏み込んだ発言をした形だ。また、6月末の民放キー局の株主総会ではジャニーズ事務所との関係や性加害問題の報道姿勢について株主から指摘される場面が相次いだという。株主からの厳しい目にさらされることで、民放キー局の現状維持路線に変化が出てくる可能性も浮上してきた。
今後、CMの「ジャニーズ枠」の存続は不安定となりそうだ。企業にとって、「未成年への性加害」という忌むべき問題を引きずっているジャニーズ事務所とのCM契約はコンプライアンス的にリスクが高く、ひとまず避けておこうと判断するケースは増加しそうだ。スポンサー離れが顕著になれば、蜜月だったテレビ局とジャニーズの関係にもはっきりと影響が出てくるおそれもある。こうした“広告業界のジャニーズ離れ”を食い止めるためには、ジャニーズ事務所が第三者機関などと連携して主体的にこの問題の調査に協力し、なぜそれを止めることができなかったのかをつまびらかにした上で、組織体制の問題にまで踏み込み、ハラスメントが起こらない新体制を築いて世間や企業を納得させる必要があるだろう。
罪のない所属タレントたちを守るためにも、ジャニーズ事務所の真摯な対応を期待したい。