瓜田にとっての「カレンダーのルーツ」

 それは瓜田が刑務所内で「さらにバカなこと」を行い、懲罰房に入れられたときのこと。普段は余暇時間に楽しめるテレビやラジオも遮断された房の中で、瓜田はカレンダーばかり眺めていたという。

「懲罰を20日間課せられたんですけど、20日間となると、気が狂いそうになるんですよ。1日がひたすら長いし、闇の中にいるような感覚なんですけど、やっぱり生きてるわけですから、1日をマイナスにしたくなくて、前向きに考えたかったんです。そこにもカレンダーがあったんですけど、毎日カレンダーとにらめっこして、『あと何日だろう』『まだ10日以上あるのか』って」

 瓜田が収監されていた松本少年刑務所には、全国の刑務所から高校教育希望者を募って卒業資格を与える制度があったのだという。

「だからね、ちょっと学があって結構まともな受刑者がいたんです。たまたま僕が懲罰を食らった“ロック部屋”が、そういう優秀な先輩たちの部屋だったんで、カレンダーに、すっごい難しいことが書いてあって。1日が本当につまんなくて、毎日その言葉に向き合ったんですね。で、ある日、いろいろあって懲罰がまた5日間延長となって、審査会から、ガクッと肩を落として帰ってきて、『俺は忘れない、今日という日を絶対に忘れない』と思ったんです。もう全部抱え込んでやろうと思って」

 そこで瓜田は、いつものようにカレンダーと向き合うことになる。先輩たちは、今日という日にどんな言葉を書いているんだ。その言葉を、俺は絶対に忘れないんだ。目に焼き付けてやるんだ。

「それで立ち上がってね、カレンダーを見たら、その日、書いてあったのが“マ●コ”のマークだったんですよ。マジで。それまでね、一蓮托生だとか、なんだとか、そういう難しい言葉ばっかり書いてあったんです。それが、その日に限って、そのへんの公園に書かれているような、汚ねえマ●コマーク。俺はね、その日がより忘れられなくなっちゃったんですよ」

 そのときから「カレンダーっていいな」という構想が頭にあったという瓜田。今回発売された日めくり『関係ねぇよ』には、もちろん、同じマークは掲載されなかったが……。

「だから、増刷になったら入れましょうよ、マ●コのマーク」

 会場の片隅で版元の担当者が頭を抱えていたことは、言うまでもない。