南太平洋諸国と初のサミットを開いた韓国の意図

 南太平洋諸国と並び、お隣の韓国にも処理水の太平洋への放出に対して国民からの激しい反発を招くなど動揺をもたらしている。6月29日配信のロイターの記事によると、福島第一原発の処理水が近く海に放出されるとの見方から、韓国では海塩などの商品の買いだめの動きが強まっているという。

 6月の塩の価格は2カ月前と比べ約27%も上昇した。こうした動きを受け、韓国政府は同月28日、政府が7月11日まで1日約50トンを市場価格より20%安く売却すると発表した。

 また、韓国は外交面でも日本が進めようとする処理水の太平洋放出に揺さぶりをかける。韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は5月29日、ソウルで韓国と太平洋諸国との初めてとなる首脳会議を開催した。会議には太平洋諸島フォーラム(PIF)加盟の16カ国、2地域の首脳が招待された。PIFにはオーストラリア、ニュージーランド、PNGを含む太平洋島嶼国、フランス領のポリネシアとニューカレドニアが加盟する。

 同会議では韓国と太平洋諸国の首脳たちによる共同声明が発表された。放射性廃棄物などに関する項目を設け、「(各国の)首脳は、放射性廃棄物及びその他の放射性物質による環境汚染のない海洋及び海洋資源を維持することの重要性について、共通の見解を再確認した」とする一文を盛り込み、処理水の太平洋への放出ありきで計画を進める日本側の対応を牽制した。文章は「この観点から、首脳たちは、海洋及び海洋資源を保護し保全するために、国際協議、国際法、独立した検証可能な科学的評価を確保することの重要性を強調した」と続き、名指しこそ避けているものの、日本に対し、太平洋に放出する処理水の安全性の徹底を強く求めた。

 IAEAのグロッシ事務局長は日本のほかに、韓国、PIF議長国であるクック諸島、ニュージーランドの3カ国も訪れる予定という。韓国、太平洋島嶼部の国々も福島第一原発事故がもたらした惨状には同情を示しつつも、処理水の自分たちの海である太平洋への放出となると、「Not in my backyard(我が家の裏庭には御免)」とNIMBYにならざるを得ないのだろう。