支持を撤回したパプアニューギニアのマラぺ首相

 パプアニューギニア(PNG)のジェームズ・マラぺ首相は当初、日本の処理水への安全性確保の取り組みを評価し、太平洋への放出にも理解を示す発言をしていたが、6月13日の国会で野党のベルデン・ナマ議員から追及されると、「私の発言は、日本が安全でない処理水を放出する資格を与えるものではない」と述べ、日本の処理水対応に関する自身の発言を撤回した。

 マラぺ首相はPNGも署名し1986年に発効した、地域の核不拡散協定である「南太平洋非核地帯条約(ラロトンガ条約)」に対する政府の見解にも触れ、今後も尊重するとした。

 同条約は南太平洋域内の国々が参加し、広島の原爆投下からちょうど40年となる1985年8月6日に署名された。背景にフランスが南太平洋における核実験を再開したことと、日本が南太平洋で放射性廃棄物を処分していたことがある。

 南太平洋地域では、米国も繰り返し核実験を行っており、戦略国際問題研究所(CSIS)運営のポッドキャスト「サウス・イースト・ラジオ」の6月22日配信の番組によると、米国はマーシャル諸島だけで1946年から58年の間に67回の核実験を行ったという。

 静岡県焼津市のマグロ漁船「第五福竜丸」が1954年3月、ビキニ環礁で水爆実験による放射性物質を含む死の灰を浴びたのもマーシャル諸島内での出来事だった。

 歴史的背景もあり、PNGを含む、南太平洋の国々には核に対する強い嫌悪感があり、「南太平洋の水域での核実験は絶対に許されない。処理水の太平洋への放出も日本が安全だと言ってもなかなか受け入れられるものでない」とNGO関係者は話す。