◆西谷弘監督との信頼関係
もちろん本作はヒッチコック監督作ではないので、実際は演出を担当する西谷弘監督(第1話、2話、最終話を担当)の手腕による。特に最終話では、西谷監督の本領発揮といえる雄大さが画面全体に溢れていた。監督の演出に応えるべく、岩田も全力の力技で臨み、いきいきとした演技を畳みかける。
こうして生まれた名場面の数々のはじまりは、第1話から。社内のお花見を抜け出した新名とみちが、周辺を歩く場面。新名がやや前を歩くツーショットを手持ちカメラが正面から捉える。ライトで照らされる夜のグラウンドが背景にある絶妙な空気感が素晴らしかった。
似たような場面は、第10話(演出は高野舞が担当)でもあった。ワーキングスペースからの帰り道、歩道橋を歩くふたりをやはり手持ちカメラが捉える。岩田の視線の動きをまるごと拾い上げようとする演出サイドの粋な意図が垣間見える。
最終話でも新名が陽一のカフェで会話する場面の流れるようなリズム、きらめきが持続するテンポ感が素晴らしかった。岩田の演技に向き合い、岩田の魅力をこれでもかと引き出そうとする西谷監督と岩田の相当な信頼関係を感じずにはいられない。
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