◆ポンと名演を出せてしまう岩田剛典
極めつけは、必要最低限を特徴とする視線の動かし方だ。例えば、楓との関係性がいよいよ瓦解寸前の第5話でのひと幕。彼女に本心をぶつけようとした新名だったが、楓のスマホに着信があり会話が中断される。
音が鳴るほうへ視線を滑らせ、鳴り止むとすみやかに戻す。簡単な演技に見えてしまうが、変に感情をこめたり、何の着色もなく単純に視線を動かすことは思いの外難しい。
筆者はこの場面での岩田について、以前書いたコラムの中で、『サイコ』(1960年)などの巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督も必ずや絶賛するのでは? と指摘した。
それくらい俳優の技量が試される場面で、ポンと名演を出せてしまう岩田剛典は、やっぱりただ者じゃないと再確認させられた瞬間だった。
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