◆修行時代を経た今
日本での一般的な認知としては、大胆不敵なダイナミックさを持ち味とする俳優のイメージが強いかもしれない。
NHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』(2015〜2016年)で五代友厚役に大抜擢され、お茶の間での人気が急上昇した。
海外での修行を経て、日本に逆輸入された2015年前後から、俳優ディーン・フジオカのイメージは揺るぎないものとなっていく。1980年生まれの彼は現在、42歳。話題が尽きる気配は全然ない。
さまざな経験の中での試行錯誤があったから、今の彼がある。ストレートでたくましい演技には、努力家の足跡がにじむ。修行時代の彼がもし今の自分の姿を見たら、どう思うだろうか。筆者はこの曲のことを思った。
◆鮮やかなピンク色が物語るもの
自主制作で作った1stアルバム『Cycle』のファーストトラックに収録されているのが、1stシングル「My Dimension」だ。トラックタイトルが示すのは、歌い手本人のありのままの姿(Dimension)。
トラック全体からは、今の自分のこうだから、出来る限りのすべてをこの曲に注ぎ込んだんだというようなディーンの心の声が聴こえてこないだろうか。
世界で見聞したものを踏まえ、そこからさらに広いスケールを持つ。「My Dimension」は、見事2013年に日本でリリースされた。
そして2023年7月26日には、初のベスト盤『Stars of the lid』がリリースされる。先行公開されたジャケットでは、髪をピンク色に染めたディーンのビジュアルが印象的。
この鮮やかな色がディーンの次なる覚醒を、そしてラッパー、歌手、俳優すべてをひっくるめた意味での“複合アーティスト”感を物語っている。
日本から再び世界へ。こんなポップなディーンさんなら、例えばハリー・スタイルズにも肩を並べるポップスターになるんじゃないかと筆者は密かに期待している。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu