大会をご覧になった皆さんは浜本さんのどこに注目しただろうか? 浜本さんのシュッとした見た目から、しゃべくり漫才をイメージする人が多いと思うが、浜本さんの武器はその動きだ。なので大半の人は見た目とボケのスタイルのギャップに驚き、動きに注目してしまったと思う。

 しかし本当に名人芸と呼べるポイントは動きではなく、その“表情”だ。お笑いにおける芝居というのは、演劇とは違い、一瞬で感情が変わる。さっきまで笑っていたのに急に怒ったり、真剣な話かと思えばいきなりふざけたり。この感情の切り替えの早さがお笑い芝居であり、これは漫才でもコントでも使用する演技法だ。

 この感情の切り替えは明らかにコントより漫才の方がスピードが早く、使用頻度も多い。漫才の基本はツッコミがストーリーを進行している最中にボケが余計な事をするというものなので、突っ込むたびに感情が切り替わる。なのでボケは基本的にマイペースに感情を切り替えていくのだが、テンダラーさんの場合、浜本さんが瞬時に独自の世界に入り込むので、ボケの感情が一気に変わるのだ。

 さらに突っ込まれた後に我に返るという演技が入っているので、とんでもないスピードで感情を変化させている。そしてその全ての感情変化に対して表情をつけているので、百面相並みに顔が変化している。しかも感情と共に大げさに変化しているので、違和感なく面白いというとんでもないテクニックを披露していたのだ。