◆“静かなるリアル”を秘めた俳優
どれだけナチュラルだとしても演じている以上、演技は嘘が前提となる。にもかかわらず、永山の演技はリアル以外に形容できない。
弟の逮捕が嘘であってくれと祈ったファンにとっては、このコメント映像が冷静に真実を受け止めよと迫るかのように映る。何気ない日常の中で現実そのものを突きつけてくるような凄みある佇まいを感じた。
“静かなるリアル”を秘めた俳優とでもいうのか。最近の彼はそうした特性をより洗練させている。
例えば、是枝裕和監督作『怪物』(2023年)。第76回カンヌ国際映画祭で坂元裕二(『Living』の脚本家!)が脚本賞を受賞しただけあって、物語とキャラクターの織り込み方が計算し尽くされている。
永山が扮するのは小学校の教師・保利道敏。冒頭からなんだかとてつもなくアホな先生が出てきたなと思ったが、そのあとの展開で驚く。内容の詳述はさけるが、わずかな表情ひとつで観客を揺さぶる演技には舌を巻く。
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