◆『のだめカンタービレ』で感じた印象

「この人、絶対すごい俳優だな」とはじめて感じたのは、『のだめカンタービレ』(フジテレビ系、2006年)を見たときだった。上野樹里が天才ピアニストを、玉木宏がカリスマ指揮者を熱演した隣で肩を並べ、永山瑛太(当時は瑛太)の印象は決して薄れなかった。

 むしろ天才とカリスマの間で全身全霊、その役を生きようとする姿に胸打たれた視聴者は多かっただろう。永山が演じたのは、千秋真一(玉木宏)が指揮者を務める桃ヶ丘音大「Sオケ」のコンサートマスター峰龍太郎。

 クラシック音楽を専門とするプロダクションにいる筆者からすると、俳優が楽器奏者を演じるときにはつい辛口評価してしまうが、永山は音大生の明快な人間性をうまく表現していたと思う。

◆役柄が似る俳優兄弟

 同作から16年を経て、今度は永山の弟である永山絢斗がクラシック奏者を演じることになる。

 門脇麦と田中圭が天才とカリスマを演じる『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系、2023年)で永山絢斗が演じたのが、門脇と幼なじみのイケメン・ヴァイオリニスト三島彰一郎だ。

 兄も弟も揃ってヴァイオリンを手にする。アマチュア(峰)とプロ(三島)の違いはあるが、俳優兄弟というのは役柄も似てくるものなのか。ただ永山絢斗はファンからキャーキャー言われるプロのヴァイオリニスト像を獲得するために、やや力が入りすぎたきらいがある。

 その一方で、ああ確かにこういう音大生いるよねという等身大の姿をかなりリアルに再現してみせた永山瑛太のほうが、彼らしい味わいも出ていて、頭ひとつ出ていたような気がする。