涼子たちは諫間のPCを探り、軍事転用できるドローンのパーツ開発に関わっていたことを知る。椎名のレンズはこのドローンの完成に必要不可欠だったのだ。会社の業績が悪化していた諫間は、「S・インダストリー」という企業からの提案を受け入れ、軍事転用目的であることを理解していながら、このドローンのパーツをS・インダストリーに納品するビジネスに手を染めようとしていたのだ。そして、このプロジェクトを進めるには、正義感の強い顧問弁護士の涼子が「大きな障害」になるが、顧問弁護士を社長の独断で解雇はできないと諫間がS・インダストリー側に伝えると、自分たちに任せてほしいと言ってきた。真の黒幕はS・インダストリーの「ミスター・S」なる謎めいた人物であり、諫間はその傀儡に過ぎなかったことが明らかになる。

 諫間は第2話の時点で怪しいキャラクターではあったが、推理もの・サスペンスものには、最初から視聴者に疑われる人物は“シロ”という通説がある。それだけに諫間が“クロ”という安直な展開はないかと思われたが、“クロ”でありつつ、やはり真の黒幕は別に存在した。

 涼子と貴山は、諫間が上水流エージェンシーに仕掛けていた盗聴器を逆に利用して諫間をはめる。そして娘の久美がプレゼントしたラペルピンにGPSを仕掛けてあるという“定番”の方法で諫間の居場所を掴み、貴山の超絶頭脳による“トラップ”で諫間を騙し、「人間的にあり得ない」諫間に罪を告白させる。諫間は外為法違反で逮捕されるが、真の黒幕たる「ミスター・S」は謎に包まれたままエンディングを迎えたことから、史上最も「あり得ない」敵として涼子の前に再び立ちはだかる続編へと続く……という可能性も十分にあるのではないだろうか。そのときは、涼子から「どこからでも這い上がれるって信じてる」と言われていた諫間が強力な味方になるかもしれない。

 久美は父・諫間の悪事にショックを受けるが、上水流エージェンシーに盗聴器を仕掛けていたのは、涼子の動向を探るためではなく、愛する娘が危険なことに巻き込まれるのを避けたいがためではないか、という貴山の指摘に、「久美が生きてるなら、それでいい」と最後に話していた父親の優しい表情を久美は思い出す。ずっと諫間に反発していた久美もまた、父親の真意を知って乗り越えたものがあっただろう。