まず僕が注目したのは戦いの形式とネタの分数だ。他の賞レースのような得点の高い方が残るという勝ち抜き戦ではなく1対1のトーナメントでその都度勝敗を決めて勝ち上がらせていくという形式で、優勝するためには最大3本のネタが必要となる。

 同じ組がネタを3本やるというのは、やる側も見る側もとても大変なことである。見る側はそのコンビのシステムに慣れてしまい、どうしても初見のような新鮮さを持つことができず、長時間見るのが苦痛になってしまう。逆にやる側はどうやったらお客さんを飽きさせないかを考える。その際に自分たちが得意とするスタイルを変えず見せ方を変えるのか、システム自体を変更して漫才ごとに違う笑いを提供するか、次に戦う相手を見据えてその相手に勝つためのネタにするのかなど、芸人によって選択肢は違うが、ひとつのネタを探求する若手芸人とは違い、様々な選択肢を持つベテラン芸人ならではのシステムであり、番組側がベテラン芸人を信頼しているのがわかるシステムであった。

 そしてもうひとつがネタの分数が6分であるということ。正直6分というのはとても中途半端な時間だ。現代の賞レースにおいて基本的なネタ時間は4分ほど。今大会に参加している僕と同じくらいの時期にライブをしていた芸人であっても基本的には5分。これが営業等になると少なくても15分以上。つまり6分というのはほんの少しだけ長いという微妙な分数なのだ。

 5分のネタをもっているならたった1分長いだけじゃないかと思う人もいるかもしれないが、その1分が芸人にとって何とも言えない長さであり、致命傷を負う可能性がある分数なのだ。本来のネタに1分ボケを足した結果、蛇足となり面白くなくなってしまったり、いつもより少しゆっくりやって時間稼ぎをした結果、間延びしたネタになってしまったり、そのくせ滑った空気を戻すには1分じゃ短すぎる。なのでとても厄介な分数なのだ。