磯山さやかをヒロインに迎えた『愛のこむらかえり』はコメディではあるものの、決して甘い内容ではない。映画監督になることを夢見ているが、助監督生活から抜け出すことができずにいる浩平(吉橋航也)とアルバイトしながら浩平を支える恋人・香織(磯山さやか)の崖っぷちライフを描いたシニカルな物語となっている。

 いつまでも変わらない、アパートでの香織との同棲生活。自分の才能のなさに見切りをつけ、助監督を辞める浩平だったが、最後に自分たちをモデルにした脚本を書き上げる。この脚本を読んだ、元スクリプター助手だった香織は号泣。その後、手直しを加えたことで浩平の脚本はなかなかのものに仕上がった。だが、ここから本当の意味で浩平と香織の地獄めぐりが始まる。

 香織は旧知の仲である映画プロデューサーの伸子(菜葉菜)に相談するが、彼女は「脚本の良し悪しが分かる人はひと握りだけ」とシビアだった。ベテラン俳優の西園寺(柄本明)に脚本を読んでもらおうとするも、ストーカー扱いされてしまう。

 一方、浩平は映画制作のための助言を得ようと、学生時代からの憧れだった伝説の映画監督・蒲田志郎(品川徹)の居場所を探り、会いに向かう。そこで浩平は衝撃的な事実を知るー。

 自分たちが理想とする映画を撮りたい。そんな夢を叶えようとする浩平と香織は悩み、苦しみ、思わぬトラブルに次々と見舞われる。コメディタッチではあるものの、日本映画の現状を映し出した業界残酷物語だと言えるだろう。