今週の1位も、先週に続いて文春の広末涼子W不倫の顛末である。2人のW不倫日記を公開しているのだ。文春の取材力には感服するしかないが、この記事にはやや問題もあるように思う。

 そのことには後で触れるとして、内容を紹介しよう。

 女優・広末涼子(42)とミシュラン1つ星シェフ・鳥羽周作(45)とのW不倫関係が話題だが、広末は取材に対し不倫を否定していた。

 だが、文春は決定的な証拠を握っていたのだ。2人は密かに直筆のラブレターをかわし合っていて、それを入手していたのである。

 例えば、広末は5月14日、高級ホテルのポストカードにこんな赤裸々なメッセージを綴っていたという。

〈淋しくて悔しいけれど、でも私は、あなたのおかげで愛を諦めない覚悟を知りました。もしかしたら、こんな風に本気でぶつかり合って求め合って、ひとを好きになったのは初めてなのかもしれません。どうしてこれまでそうできなかったのか、は解らないけれど、でも今、あなたを心から深く深く欲していること、とても愛していること、を幸せに想います。周作、あなたのことが大好きです〉

 赤裸々な愛の告白だが、2人が交わしていた「交換日記」にはお互いしか知らない秘密の暴露まで書き込まれていたのだ。

「出逢ってくれて、会ってくれて、合ってくれて、入ってくれて、泣かせてくれて、きもちくしてくれて、いつもどんな時もあなたらしく居てくれて、対峙してくれて…本当にほんとうに、、ありがとう。感謝しています。愛しています。(恥ずかしがらずに言えるように成りました。→あなたのおかげ♡笑。)2023.5.9」

 これはすごい。2人の寝室を覗いているような気分になるではないか。

 文春は筆跡鑑定までしているが、入手先から2人の自筆だという確証を得ているはずで、これはわざとらしいと、私は思う。

 広末の夫のキャンドル・ジュンが6月18日に会見を開き、過去にも妻には不倫があったが、自分が出て行って終わらせたことがあると話した。

 妻である広末は、「メイクなんかしないし、美容も気にかけずにひたすら家事をしたり、子供たちの学校のことをしている」。だが仕事で重圧などがあると「濃い化粧をして派手な格好をして眠ることができなくなる」とも明かした。

 妻・広末の心の闇を救えなかったことを「もっと早く彼女を止めていればよかった。もっと早く鳥羽氏の自宅に行っていればよかった」と涙ながらに話したそうだ。

 だが、文春に出た「交換日記」の存在は知っていたが、自分が渡したものではないと否定した。

 日記が独り歩きするはずもないから、文春に渡したのは第三者かもしれないが、夫のジュンか、鳥羽の妻のどちらかしかいないはずだ。これが明るみに出ることによって、これからの離婚訴訟や親権問題になっても有利に運べるのは広末の夫側だろう。

 夫が流した可能性はかなり高いとは思うが、広末と鳥羽は、彼女が芸能界を引退しても結婚しようとまで“決心”しているようだから、これが2人を引き離すより、さらに突っ走る可能性は高そうだ。

 ところで、広末と鳥羽のあけすけなやり取りを書いた日記風のものを、誌面で報じることに問題はないのだろうか。広末は文春の「不倫をしているか」という質問に、

「ありません! どこを情報源にそういうことを言ってるんですか。聞いた話で真実だと思わないでください。失礼です! 私、政治家なんですか、公人なんですか。プライベートないんですか。プライバシーないんですか……」

 と叫ぶように訴えている。

 たしかに彼女は政治家ではないが準公人である。不倫を報じられることは致し方ない。だが、不倫相手とのやり取りは、第三者には知られたくないプライバシー情報が詰まった「私信」である。

 それを内容ばかりではなく、写真を撮って紙面に掲載してもいる。同じようなことをやってきた私がいえた義理ではないが、プライバシー侵害といわれても致し方ないのではないか。

 私が、いま現場の編集長だとしたら、ここまで載せることには抵抗感があっただろうと思う。

 2012年、文春(6/21日号)は「小沢一郎 妻からの『離縁状』」というスクープを放った。亡くなったノンフィクション・ライターの松田賢弥が苦労して手に入れた、小沢の妻が有力後援者に送った私信を手に入れたのだ。

 その手紙の全文を誌面で報じ、私は、当時の編集長、新谷学は決断力のある人だと感心したものだった。

 だがこれは小沢という政治家の妻の手紙で、地元の有権者たちには「知る権利」があった。

 では今回はどうか。広末は公人に準ずる存在ではあるし、その彼女がW不倫をしていたと報じることは「公共的関心事」といえるだろう。

 だが、人に知られたくない私信を公開することは、報道の域を超えていないのだろうか。

 こんな疑問は、ふた昔前ならほかのメディアから出ていたはずである。だが文春一強時代の今、そうした素朴な疑問さえ投げかけられないのは一体どうしたことか。

 浮気性のタレントと有名人好きの料理人の不倫だから、何をやっても許されると文春が考えているとは思わない。取材力は今や大手新聞社をも凌ぐと、私は思っている。

 だいぶ前になるが、大手新聞の敏腕記者でテレビの報道番組のキャスターになり、歯切れのいい話ぶりが話題になり、茶の間の人気者になった人間がいた。

 その男が付き合っていた不倫相手が、テレビの人気者になって彼が冷たくなったと、文春で告白した。馴れ初めやベッドの上でのやり取りを明かしたのだ。その中に、彼にバナナを使われたという「ひと言」があった。

 私は、その人間をいささか知っていたので、これを読んだとき、ここまで書き込む必要があったのかと疑問に思った。文春が発売されるとその人間はキャスターを降り、東北の地方支社に異動していった。

 やはり、文春だ。今の記事よりもっと前になるが、毎日新聞の記者が、幼馴染の新興宗教の教祖の娘と不倫関係になったことがあった。お互い夫も妻もいるW不倫だったと思うが、彼女の夫が2人がベッドで寝ているところを写真に収めて売り込んだのだろう、小さな写真と共に文春が報じた。

 まだ部長にもなっていない新聞記者の不倫話が文春に掲載されたのは不可解だった。結局、彼は新聞社を辞めフリーの評論家になった。だが生来の酒好きが昼間からの飲みだし、数年後には肝臓が壊死して亡くなった。

 私は、週刊誌にも「武士の情け」というものがあってもいいのではないかと思っている。徹底的に取材し報じるが、これ以上は書かないでやろう。この情けは政治家や権力者には無用のものである。

 そんなことを、末広と不倫相手との交換日記を読みながら、思い出していた。(文中敬称略)