◆ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と
最後は『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS系)です。都心へと向かう電車の一両が、いきなり未来の荒廃した世界にワープして、乗客たちはサバイバル生活を余儀なくされます。主演の山田裕貴、赤楚衛二をはじめとする俳優陣たちの圧倒的リアルを感じさせる演技で、こちらもジワジワと作品の世界に引き込まれました。
本作は、登場人物たちが自分の弱さと戦う物語。たまたま同じ電車、同じ車両に乗り合わせた赤の他人たちは、スマホが機能しない、食べる物もない、何もかも遮断された“ペンディング”状態に晒(さら)されます。
◆醜い感情を抱えながらも、心を通わせる姿に胸打たれる
自分を表面的に取り繕うことがかなわないギリギリの状況下で、自分自身の弱さと否応なしに向き合わされるのです。過去から背負ってきたもの、後悔、醜い感情を抱えながらも、周囲との関係を紡ぎ、心を通わせながら活路を見いだす。そんな登場人物たちの姿に、心を打たれた視聴者は多いはず。
6月16日に放送された第9話では、乗客たちが元いた3年先の過去へと戻ってきます。大切な家族との再会や、不自由のない日常生活に喜んだのも束の間。今度は世間から好奇の目にさらされる厳しい現実が描かれました。6月23日放送の最終回では、過酷な状況に立ち向かい続けた登場人物たちが、希望ある未来を手にすることを願ってやみません。
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毎クール3~4話くらいまで観ると、ほぼ自分のなかで上位が決まってきます。しかしこの春は、どのドラマもそれぞれのテーマを、丁寧に存分に描いていて、最終回まで観ないと何とも絞り難かったです。
まだ最終回を迎えていない作品もあり、かなり悩みながら5つを厳選。泣く泣く外した作品たちにも、本当に楽しませてもらいました!
<文/鈴木まこと(tricle.llc)>
【鈴木まこと】
tricle.llc所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201