ひどい考えに取り憑かれた男たちの旅

 ギャンブラーのウィルは、若いカークを伴って、旅を続ける。カークは父親を失い、家庭は崩壊。大学には奨学金申請しながら通っていたが、リタイアしたために借金だけが残ってしまった。「生きづらさ」を抱える若い世代への、主人公・ウィルなりの温かい視線を感じる。

シュレイダー「若いカークが悩んでいるのは、決して経済的な問題からではないんだ。ウィルもカークと同じように、以前は上官への復讐を考えていた。だが、ギャンブラーとして忙しく毎日を過ごすことで、その恐ろしい考えを紛らわせることができるんだ。ウィルは忙しく働くことで、待つこと、耐えることを学んだんだよ。カークにもそのことを教えようと、旅に誘ったわけだ。違った人生を歩むことで、君の知らない世界が見つかるかもしれないよ、とね」

 迷える一匹の子羊を救うことで、ウィル自身も救われることになるようだ。

シュレイダー「そのとおり。ウィルは自分の人生に何かが起きることを待っている。何かが起きれば、自分の頭の中を占めているひどい考えから抜け出すことができるかもしれない、と考えているんだ。ウィルはそのきっかけ、口実を求めて、旅を続けている男でもあるんだ。若いカークを救うことで、自分自身も救われるはずだとウィルは考えているんだ」