ところで、そもそもなぜ今回「犬」をテーマにマンガを描かれたんですか?

まんきつ:最初は「気功」のエッセイマンガを描きたかったんですけど……。

──気功って中国の民間療法ですよね。まんきつさんらしい着想ですね。

まんきつ:あのころはだいぶスピリチュアルに振り切れてたので(笑)。それでいろんな気功の先生のところを、取材も兼ねて片っ端から訪ねてみたんです。でもホンモノは一握りで、ほとんどインチキでした。「気功って習うのにいくらかかるんだろう?」と思って聞いてみたら「僕のところは100万円です」って言うんですよ。しかも「僕は年収1千万円です。すぐに元取れるんで、この授業料は安いくらいです」って。それを聞いて、これは描けねぇな……と正気に戻りましたね。

──怪しすぎますね。

担当編集高石さん:上司からも「気功で描いたら売れはするだろうけど、“そっち側の人”のイメージがついてマイナス」と指摘されていたので、まんきつさんが諦めてくれて本当に助かりました。

まんきつ:「マンガ家人生終わるよ」って言われたね(笑)。本当やらなくてよかった。

──「気功」から「犬」というのも切り替えも大胆ですね。

まんきつ:犬のマンガを描こうと思ったきっかけは、サウナ室のテレビで見た悪質なペット業者のニュースだったんです。ペットショップで売れ残って成長した犬は、値段が下がるじゃないですか。ある業者は、そういう犬を買い取って糞尿まみれの劣悪な環境で飼育し、交配させてて。そうして生まれた子犬を売ってお金儲けするらしいんです。

──ひどいですね。

まんきつ:そうなんです。でも、ずっと犬を飼っている私もそんなひどいことが行われているって知らなかったんですよ。このひどい状況に対して、自分も何かできないかなと思いました。もともと担当編集の高石さんからも「身近な話題を描くのがいい」と言われていたので、自分の犬との生活を描きながら、犬を取り巻く負の側面も描けたらなと。それが連載を始めたきっかけなんです。