3話構成のオムニバスとなっており、「Episode 1」ではシングルマザーの朋子(川上なな実)がネット上で見つけた三上の会社にレンタル父親を頼むことから物語は始まる。ひとり娘のさくらは幼い頃に父親が家を出ていったため、父親の顔を知らない。寂しそうな娘を不憫に思い、朋子は依頼を決心した。さくらの前に現れたのは、三上演じる、優しくて明るい「理想の父親」だった。さくらは三上に心を開き、明るい表情を見せるようになる。

 続く「Episode 2」で三上にレンタル父親を頼むのは、スーパーマーケットでパートタイマーとして働く雅美(川面千晶)。息子も三上にすっかり懐くが、それに従ってレンタル父親の利用頻度が高まっていく。「理想の父親」を演じる三上に母親である雅美も心酔し、生活費を削ってまで依頼するようになってしまう。

 さらに衝撃的なのは「Episode 3」だ。進学校に通う高校生の菜々子(白石優愛)は、レンタル父親として現れる三上を本当の父親だと信じて育った。だが、三上にいつも依頼していた母親が急死。これ以上はサービスを続けられない三上は、母親の葬儀を終えたばかりの菜々子に自分の正体を打ち明けることになる。

 孤独な人たちの心の隙間を埋めることに喜びを感じていた三上だが、三上を本当の父親だと信じていた子どもたちを結果的に傷つけてしまうことにもなる。家族制度が機能しなくなった現代社会に現れた三上は、一種のダークヒーローのようだ。本作を企画し、脚本から手掛けた阪本武仁監督、そして原作者であり、三上のモデルとなった石井裕一氏に内情を語ってもらった。