西は目覚める前に暮らしていた富士宮市を訪問。夏は富士山の雪解け水が湧き出る湧玉池のある浅間神社に涼みに来ていたこと、近くのマックスバリューやイオンに買い物に来ていたこと、商店街の瓦屋根が駅までずっと続いていることなど、次々と風景から記憶を思い出していく。ただ、いざ自分が暮らしていた家が近くなると西は黙り込み、400メートル手前で、「一回ちょっと、ここで一回出てもらって」とこれ以上進まないでほしいとの申し出があり、探索はそこで終了した。

 番組スタッフが「これ以上取材をして大丈夫なのか」と確認したところ、西は「迷惑のかかる相手さえいなければ構わない」と回答したものの、担当医から記憶の探索と取材の継続についてドクターストップがかかる。

 その後、目覚めてから1年半となる21年5月、西はことぶき協働スペースからスタッフとして働いてほしいと申し出があり承諾、それを機に自活を始める。一方で、1年半が過ぎても、誰からも連絡がない状況に、西は「誰も(西が姿を消したことに)何も言ってこないっていうことは、そういう関係性でしかないんだよ」と話す。

 そして、家庭裁判所に自分の指紋が残っていた理由をあらためて尋ねることに。そこで、渡された資料には「犯歴」として、平成24年と28年には窃盗(万引き)、平成29年には占有離脱物横領と記載されてており、西は自身に犯罪歴があったことを知る。

 そこから「私の風当たりって決して良いものではなかったはずだから、そこをトータル的にいろいろ考えると、もうこのままで(記憶を知らなくて)いいかなと……」と吐露。西はことぶき協働スペースの代表やスタッフに犯罪歴があることを伝え、先方もそれを了承していたのだった。