駆け付けた直哉は、人と人が殴り合い、あちこちで悲鳴が上がる光景に愕然。まさに「戦争」だった。争いごとが苦手な米澤は、互いに傷つけ合う姿を見かね、スケッチブックを持って車両の上に立ち、「なあ! もうやめよう! やめようや!」と叫ぶ。自ら描いたイラストを破りながら、何度も「なあ!」と呼びかけ続け、「ここ、未来やろが! 未来がこんなんでええん!? こんな何もないところで、人がこんなんでええん!? もう戦うん、やめよう! 滅びて正解やったって言われんように……せめて人がまっとうな姿見せようや!」と涙ながらに訴える。叫び続けた米澤の声は争いを止め、乗客たちは我に返る。
その隙を突いて矢島はボストンバッグを強奪。ふたたび争いが戻るかと思われたが、そこに自力で脱出した紗枝、そして事態を遅れて知った山本が現れる。それまで性善説的なお人よしだった紗枝だが、山本の姿を見て「もう黙って受け入れたりしない」と意を決し、6号車の乗客の前で山本の嘘を暴く。失望と絶望が広がるなか、山本は「そう思えたほうが希望があっていいじゃないですか。『帰る』『戻れる』って言ってあげたほうがみんな喜ぶ。それだけですよ」と悪びれない。IT企業社長の山本は会社が倒産の危機にあるタイミングで2060年にやってきたため、そもそも元の世界に戻るつもりはなかった。この世界で自分がリーダーとなり、「王国」をつくりあげようとしていたのだ。
直哉は「王国? これで?……だっせぇ」と一蹴し、「結局、自分が王様になりたいだけ」と喝破する。その直哉に、山本は「じゃあ、あなたは何なんですか? 『帰るなんて無理』『未来を変えるなんて笑える』 ただ逃げてるだけの一番ダメな奴! 一番……弱い奴」と言い返したあと、「でも、俺の負けか」とつぶやいてメモ帳を優斗に渡し、去っていった。