ライブを経て聴き直してみるに当たって改めてやはりこの曲が、このフレーズが、このディストーションギターによるミュートアルペジオが、新作のオープニングを飾ってくれる事は素直に嬉しい。

 それは15年以上に渡る活動に於ける作品群での様々な挑戦、そして前作「Eye of the Storm」に顕著なロックの解体的な作業を経た上でファーストの「ゼイタクビョウ」の英訳である『Luxury Disease』と名付けられた本作と来て、解体の先にあったものが再構築であった事を高らかに宣言するに選ばれた音が、歪んだギターであったという采配が、やっぱどう考えてもエモいんすようんという「Save Yourself」からの前回偏愛的に語った「Neon」と続き、「Vandalize」。クランチ気味のカッティングフレーズと、絡む様な変則エイトビートが心地良いミディアムチューンであるが、纏うのは清涼感ではなく荒涼感っつうのがシブいぜニクいぜオトナだぜ好きだぜ。

 何がシブくてオトナかっつうと、サビでもカッティングはステイだしハットもクローズしたままの進行で、その後のCメロ的な展開にのみコードストロークが大振りになりハットもオープンになるという、楽器的な抑揚が実はここにしか使われていないという、その燻し銀な采配(しかもこのCメロに当たる部分はたったの10数秒)からの答え合わせ的な日本語詞が中心となったラスサビへ着地する流れだ。演奏のアプローチに言及する内容となってしまったが、一聴して分かる通りドラマチックにアップダウンする歌メロと対比すると、おっさんの長話にも頷いて頂ける筈。

「When They Turn the Lights On」は色々と衝撃的だったのではないだろうか。少なくともおっさんはそうであった。けれどもこれこそ前回「歌メロに全振ってみた」と書いた「Eye of the Storm」でのロックの解体からの再構築の答えである様な気がしており、そうして聴くとめちゃくちゃに頷ける。前作の打ち込みとシンセではなく、歌メロに注視してもっかい聴き直してみるとやっぱ前作からしっかり歌メロは大仰チックな方向に向いていた様に思うし、ロックバンドで歌メロ大仰で生楽器あんま鳴ってないっつうとやっぱIMAGINE DRAGONSとかが下敷きとしてあったのだろうか、なんて話はまあ、置いておくとして、そこにストレートに大仰な演奏をぶつけるという、とってもシンプルだけど大胆で、経緯を知れば知る程味わい深きで罪深きな英断。