もう一つ、第1回で受賞された市川森一さん、僕はとても大好きで尊敬している方で、市川さんは名前が左右対象で、僕も左右対称なんですよね。これもまた自慢なんですけれども。この向田賞をとるということは、向田邦子さんと市川森一さんと名前が並ぶということで、当時の僕はとてもそれが自分なりに許せなかった。まだまだ若輩者の自分が、ここでこんな大事な賞をもらってはいけないと真剣に思いまして、本当にありがたいんですけれども、辞退させてくださいとお伝えしました。その時、選考委員に市川さんがいらっしゃって、後で市川さんの奥様にうかがったんですけれども、市川さんは僕の作品をとても薦めてくださっていたみたいで、僕が辞退したのでとても残念がっていたとおっしゃっていました。今回こうやってまた賞をいただくことになりまして、たぶん市川さんも喜んでくださっていると思いますし、やっと恩返しができたかなと思っております。

今日は、僕みたいな人間のためにたくさん集まってくださって、テレビで見た人ばっかりいらっしゃるんで、本当にうれしいです。僕はあまり俳優さんと会ってお酒を飲んだりとかしない人間で、それがなぜかと言いますと、今回の「鎌倉殿の13人」に関して言えば、こんなにすてきな企画を僕に振っていただけて、プロデューサーの清水(拓哉)さん含め、時代考証の先生方が親身になってサポートしてくださり、そしてチーフ監督の吉田(照幸)さん含めすごいスタッフの皆さんがそれをドラマ化してくださり、しかも出てくださっている俳優さんは、みんなもうすてきで輝いていて、僕が作ったものを何倍もすてきに輝かせてくれる、そういうキャスティング。こんなに脚本家として幸せなことはないんですね。本当にこれ以上のことはないと思っている、その上なんで飲みに行かなければならないんだと。飲みに行けば絶対楽しいに決まっているんですよ。うれしいし、愉快だし、いい時間が過ごせるんだけども、もういいだろと、お前そんなに幸せでいいのかと神様に言われているような気がして、だから飲み会とかもなるべく参加しないように1回も出ていないので、なんて人付き合いの悪い作家なんだろうと思っていらっしゃっているかもしれませんけれども、そういうことなので許してください。

ただ、今日は皆さん来てくださって、今日くらいはいいかなと思っております。短い時間ですけれども、ほとんどもう同窓会みたいな感じだと思います。楽しんでいっていただけたらなと思います。僕は終わったらすぐに帰りますけれども(笑)。どうもありがとうございました。