今週の第1位は、歌舞伎界の大スター、市川猿之助が両親と一緒に自殺を図った「遠因」ではないかといわれる女性セブンの記事と、猿之助のその後を追った各誌の記事である。

 それにしても衝撃的な事件である。それも、猿之助のセクハラを糾弾するセブンの記事が出た日に起こるとは。

 まずは週刊ポストから見てみよう。 

「5月18日、歌舞伎俳優の市川猿之助(47)が東京都内の自宅で両親と共に倒れているのが発見され、病院に緊急搬送された。猿之助は一命を取り留めたが、両親は亡くなった。父親は市川段四郎さん(享年76)。大手紙社会部記者が言う。

『捜査関係者によると、救急隊が自宅に駆けつけた際、猿之助さん本人は地下の部屋で意識がもうろうとした状態で見つかったといいます。猿之助さんの母親は2階のリビングで倒れていて、その場で死亡が確認された。父親は2階のリビングで仰向けで倒れたまま、意識不明の重体で発見されましたが、病院に搬送後、死亡が確認されました』

 歌舞伎界随一のスターの衝撃的な事件に、梨園は騒然となっている。

「亡くなったお父さんの段四郎さんは、市川猿翁(三代目市川猿之助)さんの弟で、猿翁さんが作り上げた『スーパー歌舞伎』を支えた歌舞伎界の重鎮。近年は体調不良で舞台からは遠ざかっていましたが、突然の死に衝撃が広がっています」(梨園関係者)

「澤瀉屋」は歌舞伎界の名門だが、さまざまな葛藤があったという。

「本来ならば猿翁さんの跡を継ぐのは息子の香川照之さん(57)だったはずですが、母親の浜木綿子さんが離婚後、梨園と距離を置いたため、香川さんも長らく関わりがなかった。そんななか、香川さんと息子の市川團子さん(19)の梨園入りをプッシュしたのが猿之助さんで、その功績もあり、一門の大名跡である猿之助を継ぐことができた。

 ただし、猿之助さんは結婚しておらず跡取り不在。過去にはインタビューで結婚観について、『俺はもうどうなったっていいよ。この先の世の中なんか。俺が死んだ後なんか知らないよ』『難しいよね。価値観も変わってきてるし、男性らしさ、女性らしさが揺らいできている』と語り、今後も結婚する見込みがなかったため、両親も澤瀉屋の将来を案じていた。

 團子さんがゆくゆくは猿之助を継ぐことになるとみられていましたが、昨年、香川さんの性加害が報じられ、さらに猿之助さんをめぐるこの事件ですから、澤瀉屋は一門の存続が危ぶまれる状況にあります」(同)

 搬送された猿之助は、17日に両親と心中について話し合った。「死んで生まれ変わろうと家族で話した。両親は睡眠薬を飲んだ」と説明していると報じられているが、現場検証では薬物は発見されていないようだ。

 一部の報道では、猿之助は自宅の地下の部屋で首を吊っていたというものもあるが、真偽のほどはわからない。

 薬物だとしたら、いくら老いた両親とはいえ、相当の量が必要になる。

 Business Journal (05.20 18:05)で精神科医の片田珠美がこう書いている。

「死亡したということは、大量に服用した可能性が高い。一体、それだけの量の睡眠薬をどうやって入手したのだろうか、ため込んでいたのだろうかと考えると、今後処方することに恐怖すら覚える。

 そもそも、向精神薬は処方薬であり、医師の診察を受け、処方してもらわなければ入手できない。猿之助さん一家の誰かが心療内科もしくは精神科を受診して処方してもらっていたのだろうか。

 あるいは、外部の誰かが処方してもらった薬を譲り受けたのかもしれないが、これは麻薬及び向精神薬取締法で禁止されている行為である。最近は、ネット上で向精神薬が密売されているそうなので、ネット通販で購入した可能性も否定できない。

 いずれにせよ、死亡した両親の血液の分析によって摂取された睡眠薬の種類を割り出し、その入手経路を突き止めることが今後の捜査で重要になるだろう」

 謎の多い事件だが、その引き金になったのではないかともいわれるセブンの記事を見てみよう。以下はNEWSポストセブン(05.18 07:01)からの引用。

――歌舞伎の名門「澤瀉屋」を率いる市川猿之助(47才)の浮世離れしたハラスメント体質が浮かび上がった。歌舞伎界でもトップレベルの人気を誇る猿之助だが、劇場関係者はこう証言する。

「猿之助さんの舞台に立った経験を持つある役者は、猿之助さんとの“関係性”にかなり苦悩していました。たとえば、地方興行などの際、頻繁に猿之助さんのホテルの部屋に誘われ、お酒につきあわされていた。そればかりか“隣に寝なさい”と指示され、横になると布団の中に潜り込んできて、キスをされたり、身体を弄ばれたりと過剰な性的スキンシップをされるというのです」(劇場関係者)

 こういった証言は後を絶たず、ある澤瀉屋関係者はこう告白する。

「猿之助さんは陽気でチャーミングで洒脱で、“いいお兄さんキャラ”なのはその通りです。ただ、夜にお酒を飲んだ後、2人きりになるのが怖いんです。私の場合はタクシーで手をつなぐのは当たり前で、キスをされたり、下半身を好き勝手にされたりする程度でしたが、周りにはもっと深刻な接触を求められている人もいました。

 拒否したらどうなるか。舞台で役を与えられなかったり、無視されたり、スタッフなら仕事を取り上げられたり……。狭い世界なので断るのは本当に勇気がいることなんです」(澤瀉屋関係者)――

 横浜や鎌倉、葉山、河口湖などの隠れ家的な高級ホテルを一棟貸し切ってパーティーをして、ドンチャン騒ぎをやっていたともいう。

 そのパーティーでも、猿之助の指示で複数の参加者が入浴させられ、酔っ払った猿之助が一緒に入浴し、参加者にキスをしたり、体を触ったりなどのスキンシップが平然と行われていたというのだ――

 歌舞伎の世界は男性社会である。ここでセクハラを受けていたのも男性のようで、セブンの中にも「澤瀉屋周辺では、そうした猿之助さんの行動は知られた話で、周囲は、“今日は彼が腕枕要員だったんだな”という目で見るばかりだと言います」(劇場関係者)という箇所がある。

 第2のジャニー喜多川事件か?

 しかし、これを読む限り、一家心中をするほどの記事ではないような気がするが、理由はほかにあるのだろうか。(文中敬称略)