◆時間の“あいだ”を生きる岩田剛典

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5話より
 新名がみちに最初の質問をするとき、カメラはふたりの横顔をやや離れた位置から捉えていた。横顔からでもわかる新名の優しげな表情と口調。それに耳を澄ませているみち。絶妙な引きのカメラポジションが奏功して、これこそ、いつまでもぬるま湯に浸かっていたいと感じるようなゆるやかな場面だと思った。

 新名が解説するように、砂時計は、過去、現在、未来をそれぞれ示している。ぬるま湯に浸かるような新名とみちの時間は、実はそのどこにも位置していない。3つの時間軸のちょうど、あいだ。それは、不倫と純愛。どちらともつかない曖昧さを泳ぐふたりの関係性そのものでもある。

『金魚妻』での岩田が、純愛の錬金術師だったなら、本作の彼は、明確には言い切れない、いや、言う必要なんてない存在。豊かで、甘く、定まらない時間の“あいだ”を生きている。不倫か、純愛か。答えを急ぐ必要はない。今は、ひとまず宙づりにして、この時間に漂っていたい気分だ。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu