小児科の看護とは、成人の看護とは全く異なるある意味異世界と呼ばれる領域。成人の看護師は口を揃えて「子どもは看れないよ~!」と話している場面に何度も遭遇しました。
私は新卒から4年間、15歳以下の全ての子どもが入院する小児病棟で看護師としての基礎ややりがい、挫折を味わってきました。現在は小児看護の世界から離れていますが、また戻りたいと思う分野です。
小児科の看護師を志す方は多いと思いますが、どうしても成人の病棟と比べると数が少ないため情報が少なく、なかなか踏み込めないという方も多いのではないでしょうか?
本記事では、小児科の看護師を志す方に向けて、小児科看護の概要や、やりがい、大変なポイント、忘れられない看護など経験者目線で感じていたことを余すことなくご紹介したいと思います。
小児科の看護師を志す方の参考になればと思います。
小児科について
ここからは、小児科について詳しくご紹介します。
(1)小児科は中学三年生まで対象
小児科とは、産まれたての新生児~中学卒業の15歳までの子どもを診療する科です。多くの小児科には、NICU・GCUを併設していて早産時とそのご両親のケアも行っています。
病院にもよりますが、基本的に小児科に該当する子どものあらゆる治療は小児科で行われています。
(2)小児科で扱う疾患は基本的に全ての領域
小児科というと、喘息や肺炎、インフルエンザなどの内科的な入院が多いと思われがちですが、脳外科や整形、泌尿器などの疾患がある子も小児科での入院となります。
小児科以外の診療科の子どもの主治医は、成人病棟の医師であるため、他病棟の医師が小児科まで診察をしたり、他病棟から指示が飛んできたりします。
看護師A「全ての診療科となると、勉強が追い付かない…」
と不安に思う方もいるのではないでしょうか?
確かに、勉強は必要ですが、子どもの治癒力は早く大体3~4日、長くても1週間前後での退院となります。
よほどのことがない限り、看護展開はシンプルでスピーディなので、複雑ではありません。
そのため、成人のような複雑な看護展開はほとんど起きないと言っていいでしょう。
しかし、小児科の看護師としてオールラウンドな知識を持っているのはとても有利な武器となります。
少しずつでも知識を深めていくのをおすすめしています。
子ども専門の病院の場合は、診療科によって病棟が分かれるので疾患の知識を深めるための学習は必須です。
就職する病院に合わせた学習方法を選択する必要があります。
小児科看護師の仕事内容や役割について
ここからは、小児科看護師の仕事内容や役割についてご紹介します。
(1)小児科看護師の仕事内容と役割ついて
小児科の看護師は、基本的に成人病棟の看護師と仕事内容の差はありません。しかし、看護をする相手が子どもという所で、関わり方に差が出てきます。
入院している子の中には、保護者が常時付き添えない子や、病院自体が付き添いを許可していないことも。
時には、看護師は子どもの保護者の代わりになりますし、遊び相手にもなります。
①子どものケア
子どもは大人と違い、自分の体調の変化を言葉で言えません。また、恐怖心から大人を見るだけで号泣してしまう場合も。
そういった中で子どものケアを行います。短時間で確実な観察を行い、子どもが入院スペースに対して、少しでも安心できるような関わりを行っていきます。
医師の診療の補助、清拭や点滴の基本的なケアはもちろん、子どもが事故を起こさないように注意を払います。
- モニターや点滴チューブが適切な位置にあるか
- ベッドから乗り出して転落につながるような高さのおもちゃがベッド内に無いか
- 誤飲してしまう大きさのおもちゃが手の届く場所にないか
など、常に子どもの傍にいれないため、一瞬離れるだけでも大きな事故に繋がりかねない小児科では常に細心の注意を払います。
子どもが安心できる心のケアはもちろん、事故が起きないように環境整備の徹底が子どもの命を守ります。
特に病院は忙しい現場で思うように子どもと関われない場面もあるでしょう。だからこそ、子どもの安全を守る環境作りが大切になってきます。
②オペ前・オペ後の対応
小児科では、耳鼻科や整形外科の子ども達のオペが多く行われます。
夏休みなどの長期休暇のタイミングでは、入院している半数以上が耳鼻科のオペをする子ども達になり、小児科看護師の夏が来たと実感するタイミングです。
小児科の看護師は、オペ前、オペ後の対応が必須となります。成人と異なるポイントは、保護者の意向がとても重要という点。
今はあまり推奨されていませんが、保護者によっては
「手術とは言わず、ちっくんをすると伝えてください」
「手術ではなく、悪いものを取ると言ってください」
と依頼される場合があります。
看護の主役は子どもですが、 その子どもの家族も大切な看護の対象者です。子どもの性格や特性によっては、家族の思いを優先します。
オペ後の子どもは痛みや麻酔の眠気から不機嫌になることも多いです。保護者に添い寝してもらったり、ベッドに座った状態で抱っこをしてもらったり、子どもが少しでも安心して休める環境を作るための声かけが大切な看護となります。
③プレパレーション
大人にはインフォームドコンセントという治療に対する理解を得る関わりがありますが、子どもにはインフォームドアセントという大人と同じように治療内容を分かりやすく説明し、子どもも納得してもらう関わりが必須です。
子どもは言葉では分かりにくいため、絵本や人形を用いて分かりやすく解説するプレパレーションという関わりが大切です。
慣れない場所で宿泊、治療を受ける子どもが自分の入院生活をイメージし、少しでも安心して過ごせるよう分かりやすく伝えるのは、小児科看護師の腕の見せ所です。
その子どもの好きなキャラクターの人形を使うなど工夫をして、緊張を解けるよう関わりを持っていきましょう。
④アレルギー負荷試験の対応
子どもの食物アレルギーは、以前は完全除去が一般的でしたが、現在はその子どもの許容量を食べ続けるのが第一選択の治療です。
その許容量を確認する、許容量を増やす目的でしばしば小児科では日帰り入院でアレルギー負荷試験を行っています。
基本的にアレルギー負荷試験では、医師と看護師が1名ずつ付き添い、時間で決められたアレルゲンを摂取していきます。
急なアナフィラキシーが起きないように注意して進めていきますが、万が一のことを考えながら進めていきます。
⑤緊急入院・手術の対応
小児科は緊急入院の数が成人病棟に比べると多いです。多いときは日勤帯だけで、5~7人、夜勤帯で6人の入院が来たこともあります。
入院だけでなく、急性虫垂炎の治療目的で緊急の手術を行うケースも。
そのような緊急の対応が多いのは小児科看護師ならでは。急な環境の変化に、子どもも保護者も戸惑いを隠せない方が多いので安心できるような声かけが必須となります。
⑥家族のケア
小児科看護では、子どものケアはもちろんですが家族のケアが必須になります。
患者の中には重症患者もいるため、不安定な体調の中面会をしている家族は「我が子が元気にならなかったらどうしよう…」と不安の中誰にも気持ちを表出できない保護者もいます。
そのような家族に少しでも気持ちを表出し、楽になってもらうためには看護師の存在は欠かせません。
家族が面会していない時間の子どもの様子を伝えて、少しでも安心に結びつく関わりをすると保護者の不安感は和らぎます。
家族の治療に対する思いや、「医師に言えないけどこんなことをしてあげたい」という希望を汲み取り、医師に相談するのも大切な家族のケアです。家族とチームで子どもが元気に退院できるように関わりを大切にしていきましょう。
(2)小児科看護師のワークスケジュール
ここからは筆者が小児病棟で看護師をしていたときの日勤帯のワークスケジュールをご紹介します。
①9:00~9:30 オペ出し、ラウンド
子どものオペは9:00入室が多いので、オペの子どもを受け持つときは基本あさイチでオペ出しをします。その後で他の受け持ちの子のバイタルを含む健康状態を確認します。
②9:30~10:00 点滴、ネブライザー処置、リーダーからの申し送り
抗生剤の点滴や、喘息の子は定時でネブライザー処置があるので薬剤の準備や対応をします。バタバタとこなしていると、リーダー看護師から声をかけられて点滴の指示の変更などの変更に対応します。
③10:00~11:00 退院の子の退院出し、清拭、シャワー浴のケア
退院予定の子は私の働いてた病院では10時を目標に退院をします。忘れ物が無いか確認をして元気になった子を送り出した後は、清拭やシャワー浴の介助を順番で行います。フリーの看護師がいれば手伝ってくれることもありました。
④11:00~11:30 オペ迎え、点滴変更、家族への説明
オペが終了すると、オペ室から連絡が来るので、家族と一緒にお迎えにいきます。子どもによっては泣いてしまっている場合もあるので臨機応変に対応します。
家族はどう関わっていいのか戸惑う場合もあるので、術後の関わり方や安静を保つためにして欲しいことなどを説明します。
しばらくはこまめに訪問するというのもお伝えし安心して貰えるよう関わります。
⑤11:30~12:00 オペ後のバイタル確認、創部の観察
オペ後のバイタル測定の頻度は成人と変わりません。しかし、中には泣いて上手く血圧を測れない子も。その時は水銀血圧計を使用し、耳を研ぎ澄ましてなるべくすぐに終わらせられるように配慮をしていました。安静を取るのが難しいからこそ創部の確認も細かく行います。
⑥12:00~13:00 引継ぎをして休憩(食事介助が必要な子の依頼)
交代で休憩に入ります。最低限のことを依頼します。
⑦13:00~14:00 休憩中の確認、お昼寝が必要な子どもの寝かしつけ
休憩中に変わったことがないかを確認し、お昼寝が必要な小さい子は寝かしつけを行います。付き添いがいる家庭は、適宜声をかけて困っていることがないかを確認します。
⑧14:00~15:00 ネブライザー処置、ラウンド、バイタル測定、環境整備
午後のネブライザーやバイタルの確認、異変が無いか子どもたちとコミュニケーションを取りながら確認します。なぞなぞ大会がいきなり始まる場合も。落ち着いているときは子どもたちのなぞなぞに全力で答えたり、折り紙で遊んだりします。
⑨15:00~15:30 おやつ、おやつ介助
小児病棟ではおやつの時間があります。自分で食べられる子には配膳を行い、介助が必要な子は介助をして、みんながスムーズにおやつを食べられるように関わります。
⑩15:30~16:00 点滴処置、ネブライザー処置
夕方の抗生剤の点滴と、ネブライザー処置を行います。他の科の医師が訪れる場合もあるので日中の様子を伝えることもあります。
⑪16:00~16:30 記録、緊急入院対応があれば対応
緊急入院は時間を選ばず来ますが、緊急入院があれば対応をします。無ければ1日の受け持ち患者の様子を記録にまとめていきます。
⑫16:30~17:00 オペ後の初回歩行の付き添い、家族に今後の流れの説明
私の勤めていた病院では、日勤帯でベッド上安静が解除になるオペが多くありました。そのため、初回歩行と腸蠕動音の確認、飲水の確認を行います。無事にできたら、夜勤者に引継ぎをしていきます。
⑬17:00~17:30 記録、申し送り
残りの記録を済ませ、夜勤者に申し送りをします。保護者の不安感が強い、不安からナースコールが頻回といった情報も伝えていきます。
オムツ交換やミルク、ナースコールというのはよくあるので省いていますが、適宜対応しています。あのパズルやりたいから持ってきて、プレイルームに行きたいといった子どもならではの要望が多く、可愛いなと癒されていました。