◆あいみょんはどう判断するか?

 R・ケリーほどではないにしても、山川選手の一件はそれに近い印象を世間に与えたのではないでしょうか。女性器と下半身の複数箇所から出血するのは異常事態であり、プロスポーツ選手である男性の圧倒的な力によって女性の人権が侵害されたことは明らかだからです。

 山川選手の主張する「無理矢理ではない」が本当なのかどうかを抜きにしても、女性を傷つけた事実自体をなかったことにはできないでしょう。

 だからこそ、あいみょんがどう考えているのかを知りたいのです。今後も山川選手が試合に出て自身の曲が流れ続けるとしたら、その状況を許容していると誤解されかねません。

 アーティストは作品の中でポジティブなメッセージを発するのが理想的なのだと思います。しかし、その職業以前にひとりの人間であり、女性であるとすれば、見て見ぬふりでは済まない局面もある。

 沈黙を守り、ほんわかした愛されキャラを貫くか。それとも軋轢(あつれき)を恐れず発言して、社会的なまなざしを持つシンガーソングライターであることを証明するか。

 これはあいみょんにとっても大きな岐路となる一件だと思うのです。

アコースティックギター 楽器弾く女性
写真はイメージです
<文/石黒隆之>

【石黒隆之】

音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4