連続ドラマ『大奥』(NHK総合)第3話が放送。名前を奪われることは、時に人格を奪われることに等しい。その苦しみと同時に、自分を、ほかの誰でもない自分として認めてくれた相手が現れたときの救いの大きさを、強く伝える回だった。

 男女逆転大奥へと入った公家出身の元僧・有功(福士蒼汰)が、家光(堀田真由)から猫を与えられ“若紫”と名付けるも、あるとき、“若紫”の姿が見えなくなり、事件が起きる。

◆オリジナル要素を加えた脚本が見事

 本作の原作は『西洋骨董洋菓子店』『きのう何食べた?』などを発表してきた漫画家・よしながふみが、2004年から2021年まで連載した全19巻のSF時代劇コミック。手塚治虫文化賞マンガ大賞や、ジェンダーへの理解に貢献したSF・ファンタジー作品に送られる国際文学賞のアザーワイズ賞(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞)に選ばれるなど、傑作として名高くファンも多い。

 そうした原作モノの実写化となると、気になってくるのがキャスティングと、原作のエピソードをどう取捨選択するか。キャスティングに関しては、「没日録」を視聴者とともに読んでいく役割を担っている徳川吉宗役の冨永愛や、<家光×有功編>の福士、堀田、春日局役の斉藤由貴など、肉体が伴うと、こうなるのかと納得。それぞれの声の響きも役柄にとても似合っている。

一方、森下佳子(『JIN―JIN―』『義母と娘のブルース』『天国と地獄~サイコな2人~』)の脚本は、物語の芯を捉えたうえで、取捨選択というより、かなりのオリジナルを加える手法で打ち込み、それが成功している。