負債額が少ない層ほど不履行に陥りやすい?

しかし学資ローン総額が米国史上最大に膨れ上がった現在、これ以上放置しておけない問題として、解決策を求める動きが活発化している。

米シンクタンク、ブルッキングス研究所 は、教育省のデータに基づき、1995~96年と2003~04年の新入生による学資ローンの返済状況を分析した結果、2004年に大学に進学した米国人のうち4割が2023年までに債務不履行に陥ると予想している。

調査からはローンの借入条件によって、不履行に陥る層が異なることも明らかになった。例えば私立大学の借入者は公立大学の借入者よりも2倍、不履行に陥りやすい。借入12年後の不履行率は前者が52%なのに対し、後者は26%だ。また私立大学が公立大学よりも学費が高いため、借入者の割合は前者が47%、後者が13%とさらに4倍もの差が開く。

人種にも不履行率に影響する。借入12年後、私立大学に入学した白人で不履行に陥った割合はわずか4%だが、黒人の中退者では67%に跳ね上がる。黒人のバカロレア取得者でも、白人の中退者より5倍不履行に陥った割合が高いという事実から、中退そのものが不履行率を押し上げているわけではないことが分かる。

興味深いのは負債額が少ない層ほど、不履行に陥りやすいという事実だ。12年後の不履行率を比較してみると、1~6125ドルの借入者が37%なのに対し、2.4万ドル以上の借入者のは24%におよぶ。

FED議長は否定的「学資ローンは他の負債を同じ」

米教育省が今回の方針見直しによって、学資ローンの免責の基準を下げることを視野に入れているのは明らかだが、マイナス効果への懸念もある。

2018年1月3日の議会公聴会で 、学資ローンの膨張について質問されたジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FED)議長は、長期的な見解から、学資ローンの膨張が経済的リスクになり得る可能性を認めた。しかし学資ローンに破産宣告を適用するという発想については「学資ローンは他の負債を同じ」とし、「何故かと理由を説明しろと言われると戸惑う」と否定的な態度を示した(マーケットウォッチ2018年3月1日付記事) 。

確かに学資ローンが免責の債権に含まれた場合、様々な問題が持ち上がるだろう。ブルッキングス研究所の予想通り、総額1.49兆ドルの4割が債務不履行となれば、一体誰がそれを負担するのか。また破産宣告によって学資ローンの返済が帳消しになった負債者の生計が、本当に楽になるのか、有意義なものになるのか―といった点に、疑問を唱える声もある。

しかし学資ローンの免責は、一部の深刻な経済難に直面している負債者にとって、多少なりとも生計を立てなおす機会となるはずだ。

民主党は解決策のひとつとして、失業保険など社会保障の受給者や兵役による障害などに限り、学資ローンの免責を検討することを提案している。

ブルッキングス研究所の調査を担当した上級研究員スコット・クレイトン氏は、全体的な負債総額を懸念するよりも、私立大学の授業料に上限を設けるなど規制を導入する、学業成績の向上を図る、あるいは所得に応じた返済プランを提案するといった前向きな解決法が必要だと主張している。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)/ZUU online

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