今回、明らかになったのは、直哉たちがワープした先は確かに日本のようだが、すっかり変わり果てていること。そして元の2023年では、5号車と6号車の2両とその乗客132名が忽然と姿を消したことと、警察が捜査にあたるも何の手がかりも掴めずにいる状況にあるということだった。まだ第2話ということでワープ絡みの謎についてはまだまだ分厚いベールに包まれたままだが、そのなかで見どころとなるのは、乗客同士の人間ドラマだ。
特に、物語を動かしていくのはやはり、直哉と優斗の対立だろう。極限状態の中で、正義感が強く誰に対しても優しい人物と、どこか飄々とした現実主義者が居合わせる構図はどこか『ぼくらの勇気 未満都市』(日本テレビ系、1997年)っぽくもあるが、本作の場合、優斗が“理想のヒーロー”になろうと懸命になっている姿に、一抹の不安を覚える。
正義感あふれる消防士であり、火事の現場で自分を助けようとして半身不随になった先輩消防士と「1人でも多くの命を救う」と約束したことから、この極限の状況下でも全員を救おうと使命感を持って率先してリーダーシップを発揮しているが、互いを信じあって協力しあおう、問題はすべて話し合いで解決しよう、と訴える理想主義的な優斗が、どこかで孤立してしまいそうに感じるのだ。実際、田中の処遇をめぐる多数決では、優斗の考えが“多数派”となったものの、わずか1票差という僅差であり、第2話の時点ですでに優斗の優しすぎる方針を支持しない人たちが少なくないことを示していた。そして第2話終盤では、ひとりトンネルの中で、寮の近くにあったお好み焼き屋と思しき場所で仲間たちと写った写真を見返しながら、好きな女性への思いをめぐらせていた。しかしそれは、優斗が自分の弱さを他人に見せられないということでもある。乗客の誰かに、優斗の信念をあざ笑うかのような決定的な裏切りをされでもしたら……。「綺麗事」ばかりを並べているようにも見える優斗には、どこか危うさがあるのだ。