今週は私の都合で現代はお休み。早速サン毎からいこう。

 私は五木寛之のエッセイの愛読者である。現代で連載した『青春の門』からのファンで、とくに彼のエッセイが好きだ。

 何気ない話から入って、人生の深奥まで枝葉を伸ばしていく“技”は今や神業といっていい。

 サン毎のコラムはカラー1ページの短いものだが、時に人生の面白さや奥深さを知らせてくれる。

 少し前にはWBCで大谷翔平が試合前にチーム全員の前で話した、「今日一日はメジャー選手に憧れるのをやめよう」という言葉を紹介していた。

 今週は、永井荷風作といわれる『四畳半襖の下張り』が猥褻か文学かで争われた裁判で、作家の有吉佐和子が述べた言葉を紹介している。

「男の人って可哀そうだという気持ちです」

 もう少し説明をしてくれといわれて、

「性行為を描写することにかくも努力することにかくも熱意を傾けているということが、あわれに感じられました」

 続けて、

「やはりああいうのは法廷で論じたり、それから文字で読んだりするよりも、実践のほうが楽しいはずだから、それを一生懸命ます目を埋めて書くというのは、すでに機能が衰えている作家であろうというふうに想像いたしまして、これもまたあわれをさそわれた原因でございます」

 猥褻か否かで争われている裁判で、なんともユニークで、有吉らしい名言である。