今週の第1位は、文春が報じている「岸田首相は統一教会を解散しない」という趣旨の記事に贈りたい。
岸田文雄首相が言った統一教会の解散命令はどうなったのだろうか? このところこの問題を封印して、口に出さない岸田首相だが、文春によれば、解散命令は難しいというのだ。
しかも、統一教会のほうは解散どころか、また勢いを増しているというのである。
在韓ジャーナリストの柳錫が解説する。
「五月七日には、韓国で合同結婚式の開催が予定されています。教団の内部資料には、日本からは六百人ほどが渡韓し、参列する旨が記載されている。総裁の韓鶴子氏自ら、信者たちを“祝福”する予定です」
韓国の教団本部が多くの資金をつぎ込んでいるのは、総工費300億円超ともいわれる宮殿の建設である。
こうした資金はみな信者たちから献金されたものだ。
「実際、日本のトップである田中富弘会長も共同通信のインタビュー(四月一日配信)で、六月ごろに韓国への送金再開の可否を判断すると明かしている。教団は“復活”しつつあるのです」(社会部記者)
文春は重要な音声を入手したという。昨年8月下旬に録音されたもので、声の主は「世界平和連合」の中部地区・愛知県連合会事務局長のSだという。音声によれば、地元自民党関係者に対し、次のように述べているそうだ。
「今、我々の使命はさ、地方議員をいかに出すかということで。(略)全国的にはもうさ、いわゆる統一教会会員が地方議員出て、何十人かいるわけ」
文春によると、先般行われた統一地方選では、統一教会からの地方議員輩出が実現しているし、その中には自民党員も含まれているというのである。
その上、堂々と選挙で統一教会から応援を受けたと公言する国会議員もいるのだ。
文科省に設置された「宗教法人審議会」のメンバーの1人は、「解散命令請求は、もう無理みたいだ」と周囲に漏らしたそうだ。
審議会関係者がこう明かす。
「教団側の損害賠償額約十四億円は他の宗教団体でもあり得る金額で、これだけで解散請求するのは難しい。そこで、韓国の教団本部へのカネの流れを調査し、外為法に抵触する例がないかを探しているようです。ただ、それもなかなか上手くいっていない。政府内では解散請求は相当難しいとの見方が強まっています」
文化庁に取材を申し込むと、事務方トップの合田哲雄次長、担当の宗務課長が取材に応じたという。
――なぜこれだけの時間がかかっているのか。
「仮に今後解散命令請求をするとなれば、説得する相手は東京地裁の裁判官です。彼らを納得させるには、証拠を積み上げていくしかない。証拠もないのに請求しても、裁判所に棄却されるだけです。そのハードルが低いのなら、こんな苦労はしていません。御誌が(四月六日のTHIS WEEK『政治』で)書いていた統一地方選の後に解散命令請求を断念というのは、私ども官僚としての矜持の観点からも無い、ということはご理解頂きたいと思います」
こうした取材から見えてくるのは、岸田首相のやる気のなさだという。質問権行使にあたってはトップダウンで法解釈の変更をしたが、今回は全く違うそうである。
「岸田首相は支持率を得られそうなテーマに飛びつくものの、信念が無く言いっ放しで終わることが多い。財源論を後回しにした少子化対策がその典型です。
統一教会問題も、質問権行使を表明したのは、相次ぐ閣僚の不祥事などで支持率が低迷していた時期でした。しかし支持率が回復すると、官僚に“丸投げ”し、自らは前に動かそうとしない。いわば、不作為の罪です。このままでは国民の期待、何より被害者の切なる思いを裏切ることになります」(政治部デスク)
岸田だけではない。歴代首相に毎回裏切られているのに、国民は真から怒ろうとしない。
「まあ、仕方がない」が合言葉である。岸田首相の支持率が上がったわけでも何でもない。
「ほかに代わる人間がいないから」仕方なく、まあ岸田でもしょうがないかというものがほとんどだ。
もし広島サミットが終わって解散したら、一度でいい、自民党に入れないで、自民党以外の誰でもいいから投票してみたら、この国が変わるきっかけになるかもしれない。(文中一部敬称略)