山里の言動は当然、お笑いの世界でもアリとされているわけではない。だが、少なからずこういったパワーバランスのコンビは存在するし、特に養成所生などの超若手には多い。この現象の主な原因は、「俺がネタを書いているのに……」にある。

 自分が必死で頭を捻らせているなか、相方は遊んでばかり。一発ギャグを作ったり先輩と仲良くなったりするなど、ネタ以外のところで頑張っていればまだ納得できるが、そういうわけでもない。これで自分ができない女遊びなんかされた日には、ストレスはとんでもないことになる。そうなると本来の相方の良いところも忘れて悪いところにばかり目が行き、知らず知らずにパワハラをしてしまうのだ。おそらく山里もこの時点でパワハラの自覚はなかったことだろう。

 第3話は山里のパワハラ全開回で、誰が見ても嫌なやつだった。だが、ここにこのドラマのフェアなスタンスを感じる。

 例えば、宮崎がサボっていたりネタ見せでミスをしているシーンを挟めば、怒る山里の印象はだいぶ和らぐはずだ(それでも酷いことに変わりはないが)。それをせずに、ただひたすらに宮崎が可哀想で、山里が悪く描かれている。過去を中途半端に美化せず、真実を伝える。もちろん全部がぜんぶ忠実に再現しているわけではないのは十分承知だが、“パワハラ期”という山里を語る上で欠かせない過去を、きっちり描いたことに価値を感じる。