不動産市場の2つの「2019年問題」とは?
一見して絶好調に見える不動産・マンション業界であるが、懸念材料がないわけではない。その一つが「2019年問題」だ。
「2019年問題」には2つの懸念がある。一つは日本の世帯数が2019年をピークに減少に転じるというものであった。2013年1月、国立社会保障・人口問題研究所は『日本の世帯数の将来推計』で世帯総数が2019年をピークに減少に転じるとの見解を示していた。日本の人口は2008年をピークに減少に転じているのであるが、2019年には世帯総数もピークアウトするとの見立てだった。世帯数が減少すれば当然、空き屋が増えてくる。これが「2019年問題」の懸念材料の一つとされていた。
もっとも、今年1月に見直された同調査では「2023年の5419世帯でピークアウトする」との推計に変更している。背景には一人世帯の増加があり、ひとまずこの問題は先送りされた形となっている。
中国富裕層の「爆売り懸念」も
問題はもう一つの「2019年問題」だ。それはタワーマンションの「爆売り懸念」である。これまでマンション業界の好調を支えていたのはタワーマンションだった。タワーマンションの上層階はプレミアムがつくほどの人気があるのに、不動産評価としては上層階も下層階も一緒だったため「節税対策」として人気化した。ところが、2017年度の税制改革で見直されたことにより、節税対策の仮需は見込みづらくなっている。
節税対策とともに人気を支えたのが、中国富裕層を中心とする「爆買い」である。チャイナマネーが首都圏のタワーマンション及び首都圏・地方都市の商業地価の上昇を支えた側面がある。
中国では2008年の北京五輪前に不動産ブームが発生したが、そのタイミングで中国の富裕層は資金を大きく増やしたという。その資金の一部が東京五輪を決定した日本に回ったと考えられる。
中国富裕層がタワーマンションを「爆買い」したのが2013年~2014年。つまり、今年から来年にかけて爆買いから5年が経過することになる。居住用不動産の売却時の税金は5年以下の保有だと39.630%なのだが、5年以上は20.325%となる。このタイミングで爆売りがでるかもしれないとの懸念が、もう一つの「2019年問題」だ。
冒頭でも述べた通り、「株価は経済の鏡」とも呼ばれるが、同時に「株価は実態経済に先行する」側面もある。住友不動産の株価はどのような「不動産市場の未来像」を映し出すのだろうか、注意深く見守りたい。
(ZUU online編集部)
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