◆編集者も慌てるほどの出し惜しみナシ

──途中、中村さんから送られたリストを見て、編集者が慌てたとか……。

「はい、手ごろな価格で丈夫でかわいい食器が見つかるお気に入りの食器屋さんなど、あまりにも正直に行きつけのお店をすべて出したので、特集を提案した編集の方が逆に驚かれて、『いいんですか? 少し出し惜しんだほうがいいのでは(笑)』と。でも、いいんです! だって、大好きなお店をみなさまに知っていただけたらうれしいですし、好きになっていただけたら、なおうれしいですから(笑)!! といっても、好みは人それぞれ。ですから、読者のみなさまには、興味を持っていただいたお店を訪れていただければ……と思います。シェフは天才と思うビストロや2時間で売り切れる日もある行列のできるパン屋さん、こだわりのチーズ屋さんなどなど、出し切りました(笑)」

◆白1色のシャツのお店と一生モノの靴のお店

──中村さんというと、食事は毎日三つ星レストランで、ファッションはブランド品しか身に着けない……という印象を持つ方もいらっしゃるようです。でも、ページをめくっていると、これなら私たちでも行けそうというお店もたくさん出てきますね!

「ええっー(笑)。その印象、残念ながら違います! もちろん、衣食住、手をかけて作られたいいものはやはりいいですし、歴史や作られた背景も含めて素敵だと思うものもあります。夫と過ごす時間に、たまには星付きのいいレストランに行こうとなったり、長く大切に使うつもりで購入する物や、気に入って見ていた物が、たまたまセールになっていて購入したり……ということもあります。

 でも、それは日常ではないです(笑)。『セゾン・ド・エリコ』の読者の方はご存じだと思いますが、家で、カレーライスを作ったり、お魚焼いたり、今号ではわが家の“豚肉のしょうが焼き”をご紹介していたりもします。撮影や仕事で忙しい日には、デリバリーのお弁当やどんぶりものをお願いしたりもします。洋服もスニーカーも履けば、ネットでファストファッションも購入しますし、手ごろなお値段のトートバッグもかごバッグも愛用しています。ただ、おしゃれに関しては『ときめく気持ち』も大切にしたい。白シャツのお店などはまさにそうです」

──なるほど。確かに中村さんは値段やブランド名に左右されずに、自身の感性で選んだ物やお店を大切にしていらっしゃいますよね。今回のお店のセレクトでも随所に感じます。

「ありがとうございます! たとえば、靴やほかにも本誌でご紹介したバッグのお店などは、少し背伸びが必要かもしれませんが、一生モノともいえるものに出合えます。逆に、先ほどご紹介したような、お手頃な食器屋さんやフランスのお母さんの味のテイクアウトのお店などは親しみやすく普段着のパリを感じていただけるかと。どちらともが、パリの魅力なんです」