お次は、何やらタイトルを見ると横溝正史の世界のようなおどろおどろしい話である。

 十文字家は青森県東部、六戸町犬落瀬にある。代々続いてきた十文字家は4月13日、午前1時過ぎに業火に包まれ、かろうじてかつての家の形を残すのみになった。

 その家では、十文字利美(68)、その妻の弘子(67)を含めて8人が暮らしていたという。焼け跡からは、弘子の母親・和子と弘子、次女、次男夫婦の長女が見つかったが、なぜか和子の兄の砂渡好彦(92)の遺体も発見されたそうだ。

 全焼した家の付近には砂渡の車が止めてあり、後部座席には灯油が入ったと見られる赤いポリタンクがあったという。

 両家の間では土地をめぐるとトラブルが以前からあり、砂渡はよく、「十文字家を焼き殺してやる」といっていたという。

 そこには女性問題や後継問題、本家から不本意に分家された恨みなどが絡んでいるというのだが、複雑すぎて、ここで書く紙幅もない。

 家名争い、ドロドロした人間関係、積年の恨みなど、横溝正史の描くミステリーの世界は、どこぞの物書きが書きたくなる素材ではある。

 だが、それがために亡くなった人たちは、哀れである。