“自分らしさ”を否定されて息苦しく感じた経験も
渡辺:母国を離れて仕事をしていて、価値観や文化の違いを感じることもあると思うのですが、特に大変だった経験を教えてください。
イ・ギリム:日本で働き始めたばかりの頃、職場の雰囲気が自分に合わなくて、息苦しいと感じることがありました。日本は上下関係を重視している風潮はありますし、協調性もあるじゃないですか。例えば上司から「何か意見があったら言ってみて」と振られても、本当に自分の意見を伝えたら「それは違う」と否定されてしまったことがありました。私としては聞かれたから答えたのですが、周りからは「空気が読めない」と捉えられてしまって困惑しました。
渡辺:たしかに海外は立場にとらわれず、もっとフラットに意見を言い合うイメージがあります。暗黙のルールと言いますか、明確な基準もないですし、日本らしい独特の風潮ですよね。
イ・ギリム:私は自分の思ったことを割とハッキリ伝える性格なので、そういった空気のなかで「浮いているな」と感じました。
渡辺:日本で生まれ育った私からすると、過去の経験から上下関係を学習するシーンが多々あったので、当たり前かもしれませんが、海外だったら“YESマン”よりも率直に意見を伝える人の方が評価される場面も多いと思います。場所や相手によって正解が変わってくるので、難しいですよね。
イ・ギリム:ストレートに言われなくても「あの子は外国人だから、そういうところがあるよね」と思われているのが伝わってきて、ストレスを感じることもありました。
渡辺:自分の気持ちを伝えること自体、何も悪いことではないので、問題ないはずなんですけどね。逆にズバズバ意見を述べる人が気に入られる会社もあると思いますし。実際にその声が大きな影響を会社に与えて伸びることも十分考えられますし、ギリムさんの輝ける場所でストレスなく働くことができたらいいですね!
イ・ギリム:その後、転職をしてからは環境が変わったので、そういった悩みがなくなりました。
渡辺:無理に続けてストレスに耐え続けるのがしんどいなら、職場を変えた方が早いのかもしれませんね。仕事の内容や給料も働くうえで大切ですが、それと同じくらい自分の心の健やかさも重要だと思います! 働く社員も十人十色だから、どんな環境で生まれ育った人でも働きやすい職場にするというのも企業が成長していくうえでの課題のひとつだと思います。
自分が訳することによって、架け橋になれたら嬉しい
渡辺:どんな時に仕事のやりがいを感じますか?
イ・ギリム:仕事をしているうえで常に意識していることは、言葉選びを慎重にすること。国ごとによって同じような言葉でもニュアンスが違ってくるので、話している人のリアルな考えをいかに上手く伝えられるかが大事です。
渡辺:たしかに相手にとって良いように伝えることが正解ではありませんし、当たり障りなくすればいいというわけでもないですよね。お互いの考えをリアルに伝えるのが一番ですし、実際に言葉選びひとつで商談が成立したり、失敗したり、今後の未来に大きな影響を及ぼすこともありますものね。とても緊張感のある仕事だと思います。
イ・ギリム:本当にその通りで、表現や単語をひとつ間違えるだけでも話の内容が変わってしまいますので、気を付けるようにしています。話している気持ちをダイレクトに伝えたうえで、商談が成立した時にやりがいを感じますね。自分が架け橋になれた時はとても嬉しいです。
私は基本的に同時通訳をしているのですが、その人がどういう意図で話しているかをちゃんと伝えないといけないので、話しながらも汲み取りながら上手く伝えないといけないから難しいです。
渡辺:同時通訳だと早く伝えないと、次から次に話されたら訳する内容も溜まってしまいますし、大変そうですね。
イ・ギリム:そうなんですよ。考えすぎてしまうと、そのシンキングタイムにもまた新しい内容を話されるので、話された内容を忘れてしまわないようにしながら、全て訳してきちんと伝えないといけないんです。
渡辺:たしかに! 常に聞き逃しや言い逃しをしないように気を付けないといけないから、頭をフル活用しないといけないですね。
イ・ギリム:長時間通訳をする日は集中力が落ちてしまわないようにしなきゃいけないんです(笑) だからこそ、上手くできた時はとても嬉しい気持ちになりますね!
日本と中国で活躍したい!
渡辺:ギリムさんの今後の目標を教えてください。
イ・ギリム:まずは中国語をマスターすること! 先程、中国でも活動したいとお話しさせていただきましたが、最近中国語の5級の試験に受かったんですよ。最高が6級なので、今年中に取得できたらいいなと勉強中です。
渡辺:すでに5級まで合格されたのですね。ギリムさんのモチベーションの高さなら、すぐに6級の試験もクリアできそう。応援しています!
イ・ギリム:ありがとうございます。あとは、昔から女優になりたいという夢を持っているので日本と中国で芸能活動もできたら嬉しいです。
渡辺:ギリムさんが日本に興味を持ったのも、高校生の頃に好きになったアーティストがきっかけとのことだったので、今度は同じように日本や中国で夢を与えるような存在になれたらいいですね!
イ・ギリム:そうですね。そうなれたら理想的です! 通訳の仕事と並行してオーディションにも挑戦していきたいです。
インタビューを終えて…
通訳家のイ・ギリムさんと対談をさせていただきました。地元を離れて暮らすだけでも実家が恋しくなる方も多いなかで、海外に移住するというのは一大決心だと思うのですが、これからさらに中国に活動拠点を移したいとのことで驚きました! 対談中のギリムさんのキラキラしている目が印象的で、心の底から人生を楽しんでいる様子が伝わり、新しいことにどんどん挑戦する様子やストイックに取り組む姿勢に感銘を受けました。
異国で働くというだけでも本当に大変なことですが、通訳家としても難易度の高い、技術通訳や同時通訳をこなされていて、努力をされている姿に心を打たれました。モチベーションさえあれば、ギリムさんのように楽しく語学をマスターすることができそうな気さえします!
「人生は一度きり。だから楽しむべきよ」
ココ・シャネルの名言です。
自分の心の声に従って「住みたい場所に住む」「やりたいことをする」と実際に行動しているギリムさんを見て、かっこいいと思いました。きっと今回の対談で話したとおり、中国語の6級の試験に合格して、活動拠点を中国に移すんだろうなという想像がすぐにできました。
出演された婚活サバイバル番組『バチェラー・ジャパン シーズン3』も既に拝見させていただきましたが、今後のギリムさんの女優としての活躍も引き続き楽しみにしています♡
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