◆夫の浮気で、次から次へと地獄を見せられる妻

「夫の携帯の中に妻の幸福はない」という言葉を聞いたことがあるが、まさしくこのときの陽子は,次から次へと地獄を見せられているようなものだったろう。

「完璧」だと思っていた家庭が、実は「茶番」に過ぎなかったのか、陽子はハサミを手に、会社設立10周年のパーティを仕切っている夫に近づいていく。

妻思いの「完璧ないい夫」は本当に見せかけなのか。妻を愛しているふりをして妻から家庭でも社会でも手助けしらもらいながら、外に何人も女性がいる男性の心理とは、どういうものなのだろうか。

◆妻を利用しようとしたわけではないけれど

筆者が実際に長い「不倫取材」で見聞きしてきて感じるのは、妻にコンプレックスを抱いている男性は確かに不倫しやすい状況にあるということだ。

「30歳のとき3歳年上の女性と職場結婚したんですが、彼女はすでに幹部候補だった。仕事ができて人格も完璧という評判でした。そんな彼女を射止めた僕は、周りから羨ましがられたし、上司には『今はまだ子どもは控えてくれ。彼女は今が大事なときなんだ』と言われるほど。結婚するときわかっていたことではあったけど、生活が続くにつれ、彼女と自分の立場の差がますます開いていって、正直言って焦りました」

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写真はイメージです(以下同じ)
マサオさん(39歳・仮名)はそう言う。とはいえ、彼女は自宅では「いい妻」だった。家事も手早いし、離れて暮らすマサオさんの両親にも気を遣ってくれる。会社の同僚や先輩を呼んでもてなすこともあった。そしてときどき、会社では見せない甘えた表情で彼の男心をくすぐった。