――原作の魅力はどんなところにあると思いますか。

「読者的な部分でいうと、舞台設定の面白さと、インパクトのある出来事やそれを文字だけで映像が想像できるぐらいのリアルな描写など、最後まで飽きさせないエンターテインメント性だと思います。脚本家の視点でいうと、心情を事細かに書き過ぎていないので、いろいろな想像ができる点だと思います。この時、松子はどう思っていたのだろう、佐清はどうだったのだろうと、いろいろ想像する余地があって、これまでたくさんの人によって映像化されていますが、誰にスポットを当てるかによって見え方が大きく変わってくる作品だと感じています。本当にいろいろな方向から描くことができる懐の深い作品だと思います」

――普段どのようにして脚本を書かれているのでしょうか?

「方向性を決めるためにプロットから作る場合と、最初にプロットを書くのではなく、シーン毎に要点をまとめる箱書きにいってしまう場合など、その時によります。今回の『犬神家の一族』の場合は、監督さんやプロデューサーさんたちと同じ方向性を目指していきたかったので、最初にプロットのたたき台を作って打ち合わせをして、箱書き、脚本という形で作りました」