海沿いの村に突如として打ち上がる祟りめいた惨殺死体が全ての始まりであり、そこから主要登場人物それぞれのあれこれ、そして村を陥れんとする邪教集団の存在などが明かされる。

 流れの用心棒を稼業とする主人公・潮崎小太郎に手篭めにされた挙句、報復に現れた亭主まで目の前で小太郎に首を刎ねられるという悲劇に襲われた未亡人、愛する亭主の首を埋葬せんとする所に、菊魔様はスクリーンに舞い降りるのだ。華麗に、そして過剰に。

 菊魔様がお持ちになられていた主人公の人相書きを見て”コイツが! ウチの亭主を!”と泣きつかんばかりの未亡人の頸動脈に鮮やかなる刃の一閃! 何とも哀れな最期であるが、菊魔様が”お前もコイツを知っているのかい!”となった途端、逆上してしまったのだから仕方がない。そしてその瞬間の表情の豹変っぷりが凄まじく特に目の演技の過剰な事たるや。やっぱ忍者ともなると心技体がパネェのは勿論の事なのできっと常人の何倍もの眼筋の訓練鍛錬も積まねばならなかったのであろう。つうか顔面がマジで凄過ぎて、それは最早忍法であったしその忍法がおっさんのハートを貫いたのである。そう。華麗に。そして過剰に。

 何と菊魔様、実は里の抜け忍であった小太郎を始末するべく追ってきた孤独な殺し屋であり、しかもどうやら小太郎の許嫁的な間柄であるとの事で、おっさんは組抜けが重罪である事はよく知っているのだが、そんな事よりあの菊魔様をほっぽり出すだなんて、これは許し難く万死に値(余談ではあるが菊魔様の一人称は”アタイ”であり、そこも萌えポイントなのである)する行為である。