IPOによる上場に関わる機関とは?
IPOによる上場には、さまざまな機関が関わる。主なものとしては、「証券会社」「公認会計士(監査法人)」「株式事務代行機関」が挙げられる。
まず証券会社の役割について解説する。証券会社は民間の企業が市場に上場申請を行う準備段階から関わる。例えば、社内体制を整備するための助言を行ったり、その企業の資本政策の検討などにも携わったりする。そして証券会社側は「引受審査」を経て、企業側から上場申請手続きや公募・売り出しなどを引き受ける。
つまり求められるスケジュールや事務作業などを遂行していくのは、企業側ではなく証券会社の役割ということだ。企業がIPOを通じて無事上場を果たしたあとも、証券会社と企業の関係は続く。資金調達の場面やIR活動において、証券会社の存在は大きい。こうして証券会社と上場企業のつながりは、非常に強いものになっていく。
公認会計士(監査法人)の役割は、申請企業の財務諸表などに監査意見を表明したり、企業の内部管理や会計などの体制などについてアドバイスしたりすること。企業が上場申請を行う場合、監査報告書は必ず必要になる。
株式事務代行機関は、株主名簿の作成のほか、株主が有することになる議決権や配当などの権利に関する事務処理を担当し、東京証券取引所では信託銀行などが当該機関として承認されている。
上場申請の受付前に行われること
東京証券取引所は上場申請の受付を行う前に、証券会社との間で主に3点の確認を行う。東京証券取引所が明らかにしている内容によれば、その3点は「公開指導・引受審査の内容に関する事項」「反社会的勢力との関係」「審査日程」だ。
1つ目の「公開指導・引受審査の内容に関する事項」では、IPOによる上場を目指す企業の業種と業態、企業の成長段階、内部管理体制、会計処理、事業上のリスクといった事項を確認する。
2つ目の「反社会的勢力との関係」も当然ながら重視される。IPOを目指す申請企業が反社会的勢力と関係を持っていた場合、IPOは頓挫する。例えば、役員や株主、その企業のクライアントなどに反社会的勢力がいないかなどが確認される。
3つ目として、IPOのスケジュール案も確認される。証券会社は通常、申請から承認までの機関として、3カ月間のスケジュールを作成する。その案も事前に確認するというわけだ。
上場申請の2つの方法
その後、上場申請をする際には「通常申請」と「予備申請」という2つの方法がある。通常申請は、企業の定期株主総会が終わったあとに行われる。東京証券取引所が申請を受ける際には、申請企業側からは上場申請の責任者、事務担当者、証券会社の担当者などが出席する。
東京証券取引所が申請を受け付ける際、申請企業側は上場申請を行った理由やビジネスモデルを、IR用の資料、パンフレット、実際の商品などを提示しながら担当者に説明する。申請企業の事業範囲となる市場の規模やその市場の成長可能性などについても説明する。
東京証券取引所が申請を受け付けると、上場審査を担う担当者からは審査に関するスケジュールや上場審査の内容などが説明される。こうして、上場申請からその後の審査にステージが変わっていくというわけだ。
予備申請は、上場時期が集中することによる弊害を緩和するために導入され、申請企業の事業年度が終了する日の3カ月前から行うことができる。これにより、前倒して審査が進められるため、通常申請より申請から上場までの日程を短縮できるのである。