バラエティ豊かな韓国発の3作品

若手演出家の新たな視点による作品から巨匠による意欲作まで、バラエティ豊かな作品が揃った韓国からの招聘作品も見逃せない。韓国の社会問題を細やかに描くスタイルで知られるチョン・インチョルよる演出の『XXLレオタードとアナスイの手鏡』。――大学入試を控えたジュノ。彼はレオタードを着ると幸せを感じるが、友人やガールフレンドには絶対に言えない。ところがある日、レオタード姿の男性の自撮り写真が流出、同級生たちが写真の人物を特定しようと騒ぎはじめた…...。一体誰が、何の目的で拡散させたのか? ――。2014年のセウォル号沈没事故をきっかけに、事故の犠牲となった高校生たちが暮らしていたアンサン市の協力を得て制作され、2015年の初演以来上演を重ね2022年にはロンドンでも上演され話題を呼んだ。「いま」を生きる若者たちの心の機微をポップに描き出す作風に注目だ。

GWは静岡へ「ふじのくに⇄せかい演劇祭2023」全プログラム紹介
(画像=『XXLレオタードとアナスイの手鏡』(C)kisoul、『ぴあエンタメ情報』より引用)

『XXLレオタードとアナスイの手鏡』※日本初演
ジャンル / 製作都市・国:演劇 / アンサン・韓国
公演日時:5月3日(水・祝)14:00、4日(木・祝)13:00
上演時間:90分 ※各回開演25分前よりプレトークあり、5月3日(水・祝)公演終演後アーティストトークあり
演出:チョン・インチョル 作:パク・チャンギュ
会場:静岡芸術劇場

ひとりの歌い手が太鼓(プク)のリズムに乗せ、独特の節回しで喜怒哀楽を語る朝鮮の民俗芸能「パンソリ」。その技能保持者でもあるパク・インヘが州(チェジュ)島に伝わる〈家の神々の起源譚〉を、6人の“群唱”による叙情豊かな音楽劇に仕立てた『パンソリ群唱 ~済州島 神の歌~』。伝統芸能よりも創作手段としてのパンソリに注目し、活動するパクが、伝統的な家のあり方を映す神話を家族がコミュニケーション不全を乗り越え再生していく物語として昇華する。演劇祭最終日の7日にはパンソリの代表的な曲目や民族楽器の実演など、パンソリへの理解が深まるレクチャーも開催される予定。

GWは静岡へ「ふじのくに⇄せかい演劇祭2023」全プログラム紹介
(画像=『パンソリ群唱 ~済州島 神の歌~』(C) NA Seungyeol、『ぴあエンタメ情報』より引用)

『パンソリ群唱 ~済州島 神の歌~』※日本初演
ジャンル / 製作都市・国:音楽劇 / ソウル・韓国
公演日時:5月5日(金・祝)12:30、6日(土)13:00
上演時間:95分 ※各回開演25分前よりプレトークあり
演出・作・音楽監督:パク・インへ
ドラマトゥルク:イ・ギョンファ
会場:舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」

「ふじのくにせかい演劇祭2023」最終日に上演されるのが“韓国のピナ・バウシュ”とも評され、2002年FIFAワールドカップオープニングセレモニーの振付を務めるなど、長年にわたり国際的に高い評価を受ける振付家・アン・ウンミ振付・演出の『Dancing Grandmothers 〜グランマを踊る〜』。アン・ウンミが故郷を巡る旅で出会ったグランマたちが自由に踊る姿を記録した映像と、鍛え抜かれたカンパニーのダンサーの身体とが化学反応を起こしポジティブなエネルギーが満ちる本作を、今回は静岡に暮らす“グランマ”たちと共演するスペシャルバージョンで上演する。会見でSPAC芸術監督の宮城は「そんなところにダンスはないよと思われるようなところにわざわざ出向いて、そこにダンスを発見していった。自分とは異なるものの中にリスペクトすべき文化を発見し、それを理解しようとする。アン・ウンミさんの仕事は今非常に重要な仕事じゃないかなと思っています」と称えた。劇場がダンスフロアと化すこと必至の演劇祭フィナーレをぜひ見届けたい。

GWは静岡へ「ふじのくに⇄せかい演劇祭2023」全プログラム紹介
(画像=『Dancing Grandmothers 〜グランマを踊る〜』(C)Young-Mo Choe、『ぴあエンタメ情報』より引用)

『Dancing Grandmothers 〜グランマを踊る〜』※日本初演
ジャンル / 製作都市・国:ダンス / ソウル・韓国
公演日時:5月7日(日)14:00 / 19:00
上演時間:90分 ※各回開演25分前よりプレトークあり
振付・演出:アン・ウンミ
会場:静岡芸術劇場